事後検証により病院前救護活動の質と心肺停止傷病者の転帰は改善したか

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  • Medical inspection improves the quality of prehospital emergency care and outcome for cardiopulmnary arrest patients

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抄録

事後検証を複数の医師で行う場合,個人による評価基準にばらつきが生じる。これを解決する目的で,泉州地域メディカルコントロール協議会では,オーディットフィルター(audit filter; AF)を用いて検証を行っている。このAFを用いた事後検証と,その結果を救急隊員へフィードバック,教育したことにより,病院前救護活動の質と心肺停止傷病者の転帰が改善したかを検討した。病院前救護活動の問題点として,「資器材を現場へ携行していない」,「人工呼吸に際して,高濃度酸素投与(リザーバ付きマスク,酸素流量10 L/min)をしていない」などの事例が,検証開始時に月毎の全検証件数の60~80%に認めたが,事後検証とフィードバックや教育を行うとともにこれらの問題点は改善した。心原性心肺停止例の転帰についての検討では,非検証期間の心肺停止症例510例のうち心拍再開84例で,1カ月生存は22例(9.1%)であった。検証期間には心肺停止例が649例あり,心拍再開93例,1カ月生存27例(10.6%)と1カ月生存率は若干上昇した。この中で,救急救命士が目撃した症例については,1カ月生存率が非検証期間に10.9%であったものが,検証期間は16.9%と統計学的に有意差はないものの上昇した。その要因として,包括的指示下による除細動を導入した影響や,AFを用いた事後検証と救急隊員へのフィードバックや教育により病院前救護活動の質が改善したことが考えられた。AFを用いた事後検証と救急隊員へのフィードバック,教育は心肺停止傷病者に対する病院前救護活動の質と傷病者の転帰を改善させる可能性がある。

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