プラーク形成抑制洗口剤の現状

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  • The Present Condition of Mouthrinse Agent for Control of Plaque Formation

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抄録

口腔清掃について, 我が国で歯磨 (粉) が売りだされたのは1643年で歯を白くし口中のあしき匂いをさるという目的であったという1) 。1713年, 発刊の養生訓2) では洗口について, 食後には湯茶で口中を数回すすぐがよい…, 夜は温かな塩茶をもって口をすすぐがよい, 歯根が丈夫になる… と記している。<BR>歯周病について口腔清掃が必要であると感じ初めたのは1860年代で, Witzelが微生物が関与していると報告したのは, 1880年はじめであるとされている3) 。<BR>それが明確になったのは1965年, Löらが発表した実験的歯肉炎の論文4) であろう。すなわち, 健康な歯肉をもつ被験者にブラッシングを中止させると日を追ってプラークが増加し, それと並行して歯肉に炎症が起こり進行していくが, ブラッシングを再開させるとプラークが減少し歯肉の炎症も改善され, もとの健康歯肉に戻ることを証明したものである。次いで, 1966年Theiladeら5) がプラークと歯肉炎との因果関係を明らかにした。1970年以降, 細菌学的研究が進歩するにつれて, 健康部位と罹患部のプラーク中の細菌叢が異なり歯周病の病型によって, その型特有の細菌叢が発症に関与することが明らかになってきた6) 。<BR>現在, 歯周病は口腔内歯周病原性細菌による感染症として位置づけられ, 歯周病の予防あるいは歯周治療の基本として, その原因となる細菌性プラークを除去し, その状態を維持していくことを目的とした歯肉縁上および縁下プラークのコントロールに重点が置かれている。<BR>その方法としては機械的方法と化学的方法とがあり, 機械的方法としては歯ブラシや補助的清掃用具による歯肉縁上のプラークの除去, さらに広義には歯肉縁上・縁下のスケーリング・ルートプレーニングが含まれる。一方, 化学的方法には抗菌洗口 (含嗽) 剤による洗口および歯周ポケット内の洗浄や抗菌剤などの経口投与などがある。両者を比較すると機械的方法が化学的方法に比して, プラーク除去が高く, 適切に行われていれば歯周病の発症を予防し, 歯周組織が長期にわたり良好な状態に維持しうることが確認されている。しかしながら, 機械的方法, とくにブラッシングのみでは完壁にプラークを除去することが難しく, 必ずしも十分なプラークコントロールが得られないこと, 歯ブラシと併用する歯間ブラシ, トウースピックなど歯間清掃用具を使用することを推奨7) しているが, ブラッシング時間が長くなるなどの理由で治療中は別として, あるいは一般の人は日をおうごとに使用しなくなってしまう傾向がある。このような背景から抗菌剤, 酵素剤, 消毒剤などの水溶液を用いた洗口による化学的プラークコントロールの導入が機械的方法を補うものとして推奨されている。<BR>洗口に用いる溶液は, 含漱剤あるいは洗口剤と呼称されているが, 通常, 定義はあいまいに使われている。日本歯科用薬品集によると含嗽剤とは口腔内および咽喉内を洗浄し, 清掃, 殺菌, 除臭, 収劍, 止痛の目的で使用する薬剤, いわゆる「うがい薬」をいうが, 歯科領域では口腔粘膜や歯を対象とすることが多く洗口剤とも称しているようである8) 。<BR>ここでは現在, 歯肉縁上プラークの抑制効果の高いといわれている抗菌性洗口剤 (表1) を中心にふれてみたい。

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