水田からのメタン発生 食糧生産と地球環境保全とのバランス

  • 八木 一行
    Department of Environmental Management, National Institute of Agro-Environmental Sciences

書誌事項

タイトル別名
  • Methane emission from paddy fields: The balance between food production and global environment.

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説明

近年,大気中のメタン濃度が急激に増加を続けていることが確認され,地球温暖化への影響等から大きな注目を集めているが,モンスーンアジアに広がる水田は,その耕作面積が過去50年間で約70%拡大している事実から,この問題に関して重要な発生源であると考えられる。このため,世界の各地で水田からのメタン発生に関する研究が行なわれており,メタン発生量には土嬢の性質,水稲の活性,水管理·有機物管理などの水田耕作管理方法の違いといった諸要因が関係していることが明らかになっている。このような水田からのメタン発生の制御要因の研究から,多くのメタン発生抑制技術が提案されている。中干しや間断灌漑といった水管理技術の有効性はすでに実証されている。稲わらなどの新鮮有機物の施用を避け,堆肥化や圃場で分解させたあと土壌にすき込むなど,適切な有機物管理も有効な技術である。そのほかに,酸化剤の施用,土壊改良,品種の選抜などいくつかの技術の可能性が示されている。しかし,それぞれの技術を世界の水田耕作に適用する場合,適用可能な水田タイプ,費用と作業の労力,収量や水田土嬢の地力への影響,および環境に対して別の負荷などの問題点があり,実際に世界の水田耕作に適用可能な技術とその適用範囲は限られると考えられる。一方,多くの水田耕作国では,人口増加にともなう稲作の拡大と単位収量の増加はたいへん重要な課題とされている。したがって,メタン発生抑制技術を開発・適用するにあたり,水稲の収量増大をめざす肥培管理体系にからめた技術を開発して行くことが重要である。同時に,食f量生産の必要性とメタン発生の増大という地球環境影響の双方を評価し,その対策に関して国レベルや国際社会のなかでのコンセンサスを得ることが必要である。

収録刊行物

  • Tropics

    Tropics 6 (3), 227-246, 1997

    日本熱帯生態学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (21)*注記

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