日本の地方自治体における適応策実装の状況と課題

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タイトル別名
  • The situation and barriers on the implementation of climate change adaptation in local governments of Japan
  • ニホン ノ チホウ ジチタイ ニ オケル テキオウサク ジッソウ ノ ジョウキョウ ト カダイ

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抄録

気候変動適応策の実装に先行する4つの地方自治体の温暖化対策課と農政課にインタビュー調査を行い,適応策実装の促進要因と阻害要因の分析を行った。この結果,既往の政策普及の研究をもとに設定した政策実装における参照要因(国と地方自治体間の垂直参照,地方自治体間の水平参照),属性要因(イノベーション属性,採用者属性について,現在の適応策ゆえの独自の状況が抽出された。<BR>検証された適応策の促進要因としては,垂直参照と水平参照が一定の役割を果たしているとともに,地域の内生的条件(採用者属性)が大きなウエイトをしめている。気候被害を発生させやすい地域条件,適応策への感度が高い地域の有識者や行政管理者の存在,公設の環境研究所や農業試験場の存在といった3つの要因が促進要因となっている。<BR>適応策の阻害要因としては,国による適応計画や法制度が策定されていない状況にあるため垂直参照は強く働いていないこととともに,適応策の性質(イノベーション属性)が大きい。施策としての新しさ,適応策の研究あるいは政策としての未成熟さ,将来影響予測の不確実性が,適応策の円滑な採用を阻害している。また,採用者属性として,首長や議会のリーダーシップ不足,また行政担当部署の人員不足が適応策の推進を阻害している。<BR>適応策の円滑な普及のためには,国の適応計画の策定による地方自治体の役割の提示が求められる。また,気候変動の将来影響予測の不確実性を前提とした,計画制度・手法の開発,科学と現場を調整する主体の位置づけ・支援が必要である。

収録刊行物

  • 環境科学会誌

    環境科学会誌 27 (5), 324-334, 2014

    社団法人 環境科学会

被引用文献 (3)*注記

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