タイ国の高等植物における温帯要素の分類・地理学的研究(2)

書誌事項

タイトル別名
  • Contributions to the Flora of Southeast Asia VI. Taxonomy and Phytogeography of Some Temperate Species in Thailand (2)
  • タイ国の高等植物における温帯要素の分類・地理学的研究-2-〔英文〕
  • タイコク ノ コウトウ ショクブツ ニ オケル オンタイ ヨウソ ノ ブンルイ

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抄録

この報告は,1979年に文部省科学研究費海外学術調査(No. 404126)によっておこなわれたタイ国植物調査の成果の一つである。タイは生態地理学上標高1000ないし1300m以下の地域は熱帯または亜熱帯植生域に,区系地理学的には東南アジア区系域に所属し,そのクロラは東アジアのそれとは全く異なる。ところが,標高ほぼ1000m以高では半島部をも含めて熱帯常緑山地林とも熱帯山地多雨林ともよばれる常緑樹林が成立する。この領域は,植生学上東アジアの照葉樹林域に対応し,したがって日華区系暖温帯のメンバー,ときには石灰岩地帯や湿原などの特殊な立地には冷温帯系の要素が分布する。東南アジア区系と日華区系の混交地帯といえるだろう。私たちの調査の目的の一つは,この領域における日華区系要素(暖温帯および冷温帯要素)の分布の実態を探ることであった。そこで,まず,日華区系要素-日華区系域に主たる分布圏をもつとみられる種またはその近縁種の多くが明らかに日華区系域に分布する種-をリスト・アップしてみたところ,その数は194種となった。このリストは,CRAIBをはじめ各種の文献を考定の上素案を作成,著者各人によってチェックされてできたものである。これらは,今後分類地理学的にそれぞれ検討されていくはずであるが,第1報では21種,本報ではカエデ属の4種をはじめ,11種が議論されている。これらは大部分が中国南部ないしはヒマラヤ地域に分布するかまたはその母種が当該地域に分布しているので,中国-ヒマラヤ要素ということができるが,なかでもヤマハハコ・ヤマシロギク・マツカゼソウ・ゲンノショウコ・ツゲモチなどは,少くとも種のレベルにおいて日本と共通する植物である。

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