アマドコロ属植物(ユリ科)の種生物学的研究 : III.日本及びその隣接地域産の種の花糸の形態

書誌事項

タイトル別名
  • Biosystematic Studies on the Genus Polygonatum (Liliaceae) : II. Morphology of Staminal Filaments of Species Indigenous to Japan and its Adjacent Regions
  • アマドコロ属植物(ユリ科)の種生物学的研究-2-日本及びその隣接地域産の種の花糸の形態〔英文〕
  • アマドコロゾク ショクブツ ユリカ ノ シュ セイブツガクテキ ケンキュウ 2

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説明

筆者はアマドコロ属の種間の類縁関係を明らかにするために一連の研究を行っている。以前,この属内の分類群認識には例えば次のような問題点があった。(1)この属から様々な染色体数 (x=9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19) と核型が報告されているにもかかわらず,分類群を認識する際にこれらの特徴を考慮していないか,考慮しても(Abramova, 1975)他の一般的な報告とはくい違った染色体数と核型の結果に基づいている。(2)属内分類群を認識する際に重視する形質が人によってまちまちであり,その結果,分類群認識が一致していない。Jeffrey(1980) は「従来のいろいろな識別形質は互いに全く独立に変異する」等の理由により「属内分類群を認識することは不可能である」とまで述べている。筆者はまず第一報 (Cytologia 55: 443-466, 1990) で日本,台湾,済州島産植物に関して(1)の問題点を解決するために詳細な核型分析を行った。その結果,ワニグチソウ (Polygonatum involucratum (Franch. et Savat.) Maxim.),ウスギワニグチソウ (P. cryptannthum Lev. et Van.),ナルコユリ (P. falcatum A. Gray var. falcatum),ヒュウガナツコユリ (P. falcatum var. hyugaense Hiyama),マルバオウセイ (P. trichosanthum Koidz.)は x=9 で同一の基本核型をもっていた。ヒメイズイ (P. humile Fischer),ミヤマナルコユリ (P. lasianthum Maxim. var. lasianthum f. lasianthum),ヒメナルコユリ (P. lasianthum var. lasianthum f. amabile (Yatabe) Makino),チョウセンナルコユリ (P. lasianthum var. coreanum Nakai)は x=10 で互いに類似した基本核型をもっていた。アマドコロ (P. odoratum (Mill.) Druce var. pluriflorum (Miq.) Ohwi),ヤマアマドコロ (P. odoratum var. thunbergii (Morr. et Decne.) Hara),オオアマドコロ (P. odoratum var. maximowiczii (F. Schmidt) Koidz.)は x=10 で同一基本核型をもっていたが,その基本核型はヒメイズイのものと著しく異なっていた。ミドリヨウラク (P. inflathum Komar.),オオナルコユリ (P. macranthum (Maxim.) Koidz.)は x=11 で類似した基本核型をもっていた。タイワンオオアマドコロ (P. crytonema Hua)も x=11 であったが,その基本核型はオオナルコユリのものと著しく異なっていた。タカオワニグチソウ (P. desoulavyi Komar. var. azegamii Ohwi)は 2n=18,コワニグチソウ (P. miserum Satake) とドウモンワニグチソウ (P. domonense Satake)は 2n=19 であり,いずれも対をきれいになさない染色体で構成された核型をもっていたので,それらが構造雑種または種間雑種由来である可能性が示唆された。後者の場合,核型,外部形態,分布域から判断して,タカオワニグチソウはワニグチソウとナルコユリとの,コワニグチソウはワニグチソウとヒメイズイとの,ドウモンワニグチソウはワニグチソウとミヤマナルコユリとの雑種由来であると推定される。

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