イラク国クルド地域における簡易閉鎖型苗生産システムの開発とその可能性

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タイトル別名
  • Development of a Simplified Closed-type Transplant Production System and Its Potential for Tomato Seedling Production during Winter in the Kurdistan Region, Northern Iraq

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<p>イラク国北部のクルド自治政府内でトマト(Solanum lycopersicum L.)の作期拡大をはかるために,簡易閉鎖型苗生産システム(SCTPS)を開発し,トマトの冬期苗生産の可能性を検討した.SCTPSとは,断熱性の高いコンテナ内に家庭用エアコンを設置し,蛍光灯と循環扇,給液システムを備えた多段式の苗生産システムである.本試験では,SCTPSと灯油ストーブを備えたビニールハウスを用い,現在クルド地域で栽培されていない冬期のトマト苗生産の可能性を比較検討した.育苗ハウスの設置費用は1,440 USDだったのに対し,SCTPSの設置費用は7,479 USDであった.播種22日後のトマト苗の茎長はSCTPSでは6.2 cm,育苗ハウスでは4.0 cmだった.また,茎径はSCTPSでは2.1 mm,育苗ハウスは1.4 mm,展開葉数はSCTPSでは3.5枚,育苗ハウスは2.5枚とSCTPSのトマトは有意に大きく,SCTPSでは良質な苗を短期間で育苗可能であった.SCTPSでの1株あたりの消費電力量は0.15 kWhであり,その電力費用は0.0036 USDだった.育苗ハウスの灯油消費量は1株当たり0.19 Lであり,その費用は0.22 USDだった.この地域の冬期の気象データを基に暖房負荷を算出すると,SCTPSは18.0 MJžd-1,育苗ハウスでは492.8 MJžd-1だった.冬期のクルド地域でのSCTPSの利用は育苗ハウスよりも低いエネルギー消費量でトマト育苗を可能とし,当該地域を含めて環境制御装置の導入による生産性向上の効果が期待される.</p>

収録刊行物

  • 沙漠研究

    沙漠研究 26 (1), 9-16, 2016

    日本沙漠学会

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