用田南原遺跡出土の小人症幼児人骨

  • 白波瀬 亜由実
    東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 国立科学博物館人類研究部
  • 鈴木 隆雄
    東京都老人総合研究所
  • 馬場 悠男
    東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 国立科学博物館人類研究部

書誌事項

タイトル別名
  • A Dwarf Child Skeleton from Youda Minamippara Site
  • ヨウダ ミナミッパラ イセキ シュツド ノ コビトショウ ヨウジ ジンコツ

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抄録

神奈川県藤沢市用田に所在する用田南原遺跡において,近世の土坑墓から小人症(侏儒)を示す4才前後の幼児人骨が出土した。本人骨は,保存状態はやや不良であるが,全身各部に渡って保存されているため,ある程度正確な観察と診断が可能であった。本幼児の四肢骨は著しく短く,長骨における軟骨形成の異常による長軸成長障害があったことは明らかである。椎骨は全体的に小さく,歯突起の低形成や腰椎の楔状椎化も認められた。顔面頭蓋には,保存されている部分に関する限り変形が見られなかった。このような形態的特徴や死亡年齢から判断すると,本人骨の症状は軟骨無形成症よりもむしろ先天性脊椎骨端異形成症に該当する可能性が高い。先天性脊椎骨端異形成症は比較的稀な疾患であり,古人骨においては世界でも1例しか報告されていない。日本においては,これまでに古人骨の小人症の報告例はなく,本人骨は初の報告例であるとともに,軟骨無形成症との鑑別などの点において,極めて興味深い古病理学的症例である。<br>

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参考文献 (29)*注記

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