薬物治療におけるリスクコミュニケーションの課題と評価の試み

  • 古川 綾
    アイ・エム・エス・ジャパン株式会社 多摩大学医療リスクマネジメントセンター
  • 上沢 仁
    アイ・エム・エス・ジャパン株式会社
  • 古賀 竜矢
    アイ・エム・エス・ジャパン株式会社
  • 真野 俊樹
    多摩大学医療リスクマネジメントセンター
  • 平井 俊樹
    行政書士(元厚生省医薬安全局審査管理課長)

書誌事項

タイトル別名
  • Evaluation of Effectiveness of Risk Communication for Medication Therapy
  • ヤクブツ チリョウ ニ オケル リスク コミュニケーション ノ カダイ ト ヒョウカ ノ ココロミ

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抄録

安心・安全な医薬品使用を推進するには,患者,患者の家族,医療者,製薬企業,行政などの関係者間での医薬品ならびに医薬品服用に伴い想定されるリスク,特に副作用についてあらかじめ情報を共有し,リスクの発生を最小化するためのリスクコミュニケーションが適正に実施されることが重要である。医薬品のリスクコミュニケーションは,安全性情報の収集と分析に基づくリスクコミュニケーションの立案,関係者間での情報共有とリスクを最小化するためのアクションの実施,アクションの実施状況と結果に基づくリスクコミュニケーションの評価,評価結果に基づく改善の4段階で進められるが,現在,そのいずれの段階においても課題が指摘されている。特に,評価についてはこれまで確立された方法は少なく,早期の対応が望まれる。今回,行政,製薬企業から医療者への安全性情報の伝達についての評価をレセプトデータならびに医療者による安全性情報検索数を用いて検討する方法を試みた。その結果,検討に用いた2事例ではいずれも注意喚起が医療者に浸透し,リスクを回避するために処方行動が変化していることが確認できた。今後,継続的にリスクコミュニケーションを改善していくために,医療者への安全性情報伝達の評価の仕組みを取り入れるとともに,患者を含めたチーム医療の中で,リスクに関する双方向コミュニケーションが推進され,リスク最小化を共に考える意識が醸成されることが急務であると考える。

収録刊行物

  • 医療と社会

    医療と社会 21 (1), 41-53, 2011

    公益財団法人 医療科学研究所

参考文献 (1)*注記

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