術後せん妄時の幻覚に苦しむ癌患者にみられた身体性の回復に関する考察

書誌事項

タイトル別名
  • Corporeal Recovery of Cancer Patient having Postoperative Delirium with Hallucinations

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説明

術後せん妄は,死の不安や深刻な身体的侵襲によって引き起こされる重大な疾患である。ここでは,術後せん妄を体験した癌の女性患者の心理療法過程を報告する。クライエントは手術後,断続的にせん妄状態が続き,退院後にせん妄時の感覚が蘇り不安に圧倒された状態となって心理療法を紹介された。突然蘇る幻覚は死の恐怖や個人的不安を顕在化させただけでなく,意識の知らない身体記憶も呼び覚ました。そして呼び覚まされた身体記憶は,自己の中に定位できないまま自己を脅かす経験となり,身体性を喪失した状態であった。幻覚をセラピストに話すことによって,幻覚は自分自身の内的真実であり,記憶がなくてもそのとき確かに自分がそこに存在していたのだと気づいていった。そして,最終的に彼女は手術と術後せん妄の経験や傷を持った身体を受容できた。すなわち,彼女は身体性を回復したのである。本論文は,この心理療法過程を提示し,手術や重大疾患による心身的侵襲や身体性の喪失に対して,身体感覚に基づく言語的コミュニケーションによる心理療法が有効であることを考察した。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282679448410112
  • NII論文ID
    130004562153
    130005438210
    130006832366
  • DOI
    10.11377/sandplay.24.2_2_3
  • ISSN
    2186117X
    09163662
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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