保存型 CIP 法による多相流の効率的な非構造格子数値計算モデル

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Efficient numerical model for interfacial multi-phase flows on unstructured grid using conservative CIP method

抄録

衛生陶器などの住宅設備機器の設計におけるもっとも重要な課題の一つに、節水化が挙げられる。節水商品を設計する際の鍵は、より少ない水量においても十分な洗浄性能を発揮することである。この目的のために、衛生陶器のセラミック表面に十分な洗浄力を持った薄い水膜を供給することが効果的な方法であり、新しい節水商品設計において考慮されるべき点である。他の多くの製造業と同様に、TOTOにおいてもComputer Fluid Dynamics (CFD) 技術は主要なComputer Aided Engineering (CAE) ツールとして新製品の設計や評価に用いられてきている。製品開発プロセスにおける多相流シミュレーションでは、既存の市販CFDソフトウェアを用いても適切な計算精度や計算効率が得られなかったため、ここ数年にわたり自社製CFDコードの開発を進めてきた。以前のバージョンでは直交格子計算手法およびGeneral Purpose Graphic Processor Unit (GPGPU) や Message Passing Interface (MPI) 並列計算などのHigh Performance Computing (HPC) 技術を利用していた。しかしながら、GPGPUスーパーコンピュータ上での1億メッシュ以上の格子を用いた高解像度シミュレーションにおいても、直交格子計算手法では衛生陶器の曲面表面の薄膜流れを十分な精度で計算できないことが分かった。<br>この直交格子の欠点を克服するため、本論文では衛生陶器における気液二相流をシミュレートする新しい非構造格子数値計算モデルを提案する。衛生陶器製品の曲面表面における薄膜流れを精度良く解くために、Volume/Surface-Integrated Average based Multi-Moment Method (VSIAM3) およびSurface Tracking by Artificial Anti-diffusion (STAA) 法を非構造格子に拡張した。この手法により、数値計算モデルにおいて複雑な形状における気液二相流れを高精度にシミュレートすることが可能となる。VSIAM3では、二種類のモーメント値、すなわちVolume Integrated Average (VIA=体積積分平均値) およびSurface Integrated Average (SIA=面積分平均値) を利用することで、従来のTVD法のような空間線形補間とは異なる、より高次精度の空間補間再構築を実現している。非構造格子の各面における数値フラックスの計算のために、面の法線方向に一次元の補間関数を再構築することで、VSIAM3アルゴリズムは容易に任意多面体非構造格子に拡張できる。一方STAA法においては、気液界面の法線方向への人工的な反数値拡散フラックスにより流体率を補正することで、界面の幾何的誤差を生じることなく界面近傍の数値拡散を抑制する簡易なアルゴリズムを構築した。界面の幾何的情報はレベルセット関数から得られ、レベルセット関数は流体率から生成される。ベンチマークテストにおける数値計算結果では、VSIAM3およびSTAA法ともに市販ソフトやオープンソースコードで広く用いられている既存手法よりも優れた精度が得られている。VSIAM3およびSTAA法を移流計算および気液界面捕獲ソルバーに用い、非構造格子におけるフラクショナルステップ法に基づいた多相流解法のための数値計算フレームワークを構築した。<br>我々の数値計算コードは、最新のコンピュータハードウェア技術を最大限利用するためにHPC環境に移植された。この数値計算フレームワークのアルゴリズムの簡易性により、GPGPUアクセラレーションやMPI並列計算への実装は極めて容易である。我々は衛生陶器製品における複雑流路の非構造格子モデルを用いて計算効率のテストを実施した。本テストにより、一般的なPCクラスタにおいて、GPGPU加速率および並列計算スケーラビリティの両方において新しく開発されたコードは十分な性能を発揮することが分かった。ベンチマークテストの結果では、薄膜流れや飛沫および気泡の複雑な動きを再現できた。衛生陶器の実製品条件における検証では、以前の構造格子のときよりも大幅に少ない非構造格子数において製品表面の薄膜流れの動きが適切にシミュレーションできるようになった。

収録刊行物

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282679448568576
  • NII論文ID
    130006317787
  • DOI
    10.11421/jsces.2018.20180001
  • ISSN
    13478826
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
    • KAKEN
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ