代数的マルチグリッド法を用いた粒子法における圧力ポアソン方程式の解法

  • 松永 拓也
    東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻
  • 柴田 和也
    東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻
  • 室谷 浩平
    東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻
  • 越塚 誠一
    東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • Solution of pressure Poisson equation in particle method using algebraic multigrid method

この論文をさがす

説明

本研究では, 粒子法を用いた非圧縮性流れの数値シミュレーションにおける圧力ポアソン方程式の解法として適するAMG法を用いた線形ソルバーについて検討を行った. 粒子法では, 格子法の場合と比較して, 係数行列が多くの非ゼロ要素をもち, なおかつ, 時間の進行と共に大きく変化することが特徴として挙げられるが, これに即する手法としてPA-AMG法ならびにK-cycleマルチグリッド法をBiCGSTAB法に対する前処理として適用することを考え, 数値実験に基づく性能検証を実施した. <br>基礎検証として2次元ポアソン方程式にMPS粒子間相互作用モデルを用いて離散化した線形方程式を対象に解析を行った. なお, 擬似乱数を用いることにより粒子分布のばらつきを模擬した. 検証の結果, 対象とする問題サイズに依らずおよそ一定のcoarsening ratio (3.9から4.0) を有する安定なコースグリッド生成が実現された. また, 求解にかかる計算時間について前処理なしBiCGSTAB法と比較したところ, 問題サイズnに対して, 前処理なしの場合ではnの1.5乗に, PA-AMG前処理付きの場合ではnの1乗に比例する傾向を示した. また, n > 10^4では前処理なしBiCGSTAB法より高速であり, n > 10^6では10倍以上の速度が得られた. <br>実問題に対する有用性を検証するため, MPS法を用いた2次元ダムブレイク問題の非圧縮流れの解析を行った. MPS法の計算において現れる圧力ポアソン方程式の解法として前処理なしBiCGSTAB法とPA-AMG前処理付きBiCGSTAB法を適用し, シミュレーションに要する全体の計算時間の比較を行った. その結果, 検証を行った粒子数範囲 (7000~130万) では総じてPA-AMG前処理付きBiCGSTAB法を用いた場合の方が高速であり, 最大で約16倍の高速化が得られた. 更に, 全体の計算時間に対する圧力ポアソン方程式解法が占める割合は粒子数が大きな問題に対してもおよそ一定に保たれる結果となった. <br>以上の結果より, PA-AMG法を前処理としたBiCGSTAB法は, 流体シミュレーションにおいて, 粒子分布の不均一化や複雑な境界形状変化に対する堅牢性を有し, 安定して高い計算速度を実現できることから, 粒子法の圧力ポアソン方程式に適する一解法であると結論付けることができた.

収録刊行物

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282679449668608
  • NII論文ID
    130005151023
  • DOI
    10.11421/jsces.2016.20160012
  • ISSN
    13478826
    13449443
  • 本文言語コード
    ja
  • 資料種別
    journal article
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
    • KAKEN
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ