全身麻酔下歯科治療の抜管後に陰圧性肺水腫を引き起こした10p-症候群患者の1例

DOI
  • 原野 望
    九州歯科大学附属病院あんしん科 九州歯科大学歯科侵襲制御学分野
  • 左合 徹平
    九州歯科大学歯科侵襲制御学分野
  • 茂山 幸代
    九州歯科大学附属病院あんしん科 九州歯科大学歯科侵襲制御学分野
  • 梶田 美香
    九州歯科大学附属病院あんしん科 九州歯科大学歯科侵襲制御学分野
  • 椎葉 俊司
    九州歯科大学歯科侵襲制御学分野
  • 渡邉 誠之
    九州歯科大学附属病院あんしん科 九州歯科大学歯科侵襲制御学分野

書誌事項

タイトル別名
  • A Case of 10p-Syndrome That Caused Negative Pressure Pulmonary Edema after Extubation during Dental Treatment under General Anesthesia

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抄録

<p>陰圧性肺水腫は上気道閉塞に由来し,解除後に急激に発症する.今回,日帰り全身麻酔下歯科治療の抜管後に陰圧性肺水腫を経験したため報告する.</p><p>患者は20歳男性.10p-症候群による知的能力障害,てんかん,僧帽弁閉鎖不全症を有していた.全顎的なう蝕のため,全身麻酔下歯科治療を計画した.</p><p>過去9回の全身麻酔下歯科治療において,抜管後に低酸素症を認めていたが,すべて早期に改善可能なものであった.今回も同様の手順で,十分な覚醒を認めたため,反対側の鼻腔に経鼻エアウェイを挿入した状態で吸引抜管した.抜管後,上気道閉塞様の呼吸様式を示し,SpO2が50%台まで低下しチアノーゼが出現したため,マスク換気による非侵襲的陽圧換気を行った.しかしSpO2は90%前後にとどまり,口腔内からはピンク色泡沫状分泌物を,胸部聴診では湿性ラ音を,胸部エックス線写真では両側肺野部陰影の増強を認めたため,喉頭痙攣による陰圧性肺水腫と判断した.回復室では,酸素マスク装着困難のため,ルームエアーにてベッドをギャッジアップして経過観察を行った.2時間後,SpO2が99%まで回復し,またベッド上安静が困難になったため帰宅許可を出した.後日,電話訪問にて経過観察したが,その後は経過良好であった.</p><p>陰圧性肺水腫は,予後良好ですみやかに治療すれば生存率はきわめて高いとされている.しかし重症例や遅発例の報告もあり,術後管理ならびに帰宅後の対応に関して,再検討する必要があると考えられた.</p>

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