パルス波では適切な刺激設定と発作評価が不可欠

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  • Determination of seizure adequacy and methods of stimulus dosing are essential for the clinical practice of pulse-wave ECT

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抄録

パルス波ECTの施行では,「方法」がきわめて重要であるが,そのことがいまだ国内には浸透していない。サイン波の習慣にはなかった刺激用量を的確に設定し,発作脳波の有効性評価を行って次回の設定を行うことが必須である。「方法」を問わずに効果や有害事象を論じても意味は乏しい。有効な「方法」で不可欠なのは,1.脳波による発作の有効性判定,2.適切な刺激用量設定,3.発作抑制因子(麻酔薬,併用薬)への配慮,4.発作誘発のaugmentation(必要時)である。<BR>発作の有効性は発作持続時間では判定できない。典型的には,刺激用量を上げれば発作時間は短くなる。判定に重要なのは,規則的な対称性高振幅棘徐波と十分な発作時抑制,それに伴う交感神経系の興奮である。不適切な発作の場合は,次回に刺激用量を上げる必要がある。その際,臨床効果を得るには,両側性電極配置の場合,発作閾値の1.5〜2.5倍すなわち「治療閾値」を超える刺激用量が必要であるため,1.5倍の上げ幅が合理的である。しばしばみられる10%ずつ上げる用量設定や発作が長ければそれでよいという考え方は誤りである。辛うじて発作閾値を超えるような刺激用量では,効果がないばかりか,副交感神経優位による徐脈や遷延性・遅発性発作を生じかねない。逆に,初回から100%というような発作閾値を大きく超える刺激は認知障害を生じやすく,発作閾値を早期に上げてしまい,治療が失敗に終わりやすい。このほか,麻酔薬の種類・用量を考慮すること,併用薬としてベンゾジアゼピン(BZ)系薬剤を一切避けることも必須である。どうしてもBZを使用する場合は拮抗薬のflumazenilの麻酔前投与を積極的に用いるべきである。<BR>ECTは精神科治療にとって必須の「最後の妙法」である。そのための重要な前提が,本論で述べた「方法」なのである。

収録刊行物

  • 総合病院精神医学

    総合病院精神医学 24 (2), 118-126, 2012

    一般社団法人 日本総合病院精神医学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (18)*注記

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