ミカン生産における農家の供給反応

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  • ミカン セイサン ニ オケル ノウカ ノ キョウキュウ ハンノウ

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抄録

明治以降におけるミカン生産の長期的変動要因を大きく二つに分け, 一つは栽培面積の変動と, 他方では反収の長期的変動とした.<BR>栽培面積の拡大を説明するために, 農家が経済的行動をする主体であることと, 予想価格に対する面積の反応という供給関係を仮定した. 予想価格と実現価格の間の関係として, 長期 (ある期間内) にわたる一定の弾性係数を考えている. そして農家が価格予想をして面積拡大を試みる過程について, ミカン生産の特殊性と開園時の技術的制約, その結果生ずる一定の時間的ズレを想定している.<BR>このようにして統計的に推計したパラメータの値は第2表に示した. 第二次大戦前のミカンの現実価格が停滞ないし下落傾向を見せる時期 (1933~41年) では相対的価格に対する反応係数は相対的に小さくなり, その期間の他の (時間の経過とともに変動する) 説明要因の反応係数が相対的に大きくなる. この時期には他作物からの転換が顕著にあらわれる.<BR>次に農家の行動をより現実的に説明するため, 家族労動力にくらべ, 相対的に限定された耕地条件を考慮に入れ, 農家の経済行動の指標として反当生産価額をとり, 反応係数を計測した. 相対価格をとった模型にくらべ, 反当生産価額に対する反応係数は戦前では小さくなったが, 戦後では大きくなった. 戦後の時期においては, 相対価格をとった模型よりも, 反当生産額をとった模型のほうが, トレンドの反応係数の持つ相対的な重さが減少する.<BR>供給関係式のパラメータを推定するために媒介となった予想価格の弾性値については (現実価格の下落期をのぞいて), 戦前と戦後を比較すると, いずれの模型でも戦前のほうが大きい. これは今期の予想価格形成の要因としては, 戦前においては前期の実現価格が持つ重みのほうが, 前期の予想価格の持つそれより大きかったが, 戦後においては前期の予想価格の重みが相対的に大きかったことを示している.

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