タンパク質構造データバンクの進展

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  • 中村 春木
    大阪大学蛋白質研究所蛋白質情報科学研究室

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抄録

タンパク質,核酸,糖鎖などの生体高分子の立体構造情報は,構造決定を行った研究者がデータを寄託する形でのデータバンク方式によってタンパク質構造データバンク(PDB)として集積されている.PDBは1971年に米国で誕生し,最初はわずか7件のみが登録されていたが,データ登録を論文投稿の必須条件とするよう1980年代に国際結晶学会が主要な科学雑誌に働きかけた結果,登録データが急増し,2013年12月末までに96,600件を超える構造情報が登録され,更に増加している.2003年には,米国The Research Collaboratory for Structural Bioinformatics(RSCB)-PDB,欧州The European Bioinformatics Institute(EBI)-PDBeとともに,大阪大学蛋白質研究所が運営するPDB Japan(PDBj,http://pdbj.org/)が協力して,国際的なworldwide PDB(wwPDB,http://wwpdb.org/)を設立した.<br>その後,核磁気共鳴(NMR)法によって解析された化学シフト情報を集積しているBioMagResBank(BMRB)がwwPDBに加わり,さらに電子顕微鏡画像データのデータベースであるThe Electron Microscopy Data Bank(EMDB)とも連携を行っており,国際連携の下,構造生物学の多様な一次データがwwPDBに集積されている.PDBでは設立当初からデータ公開の原則を貫いており,現在ではインターネットを通じて世界中の誰でも構造データを無償で利用することができる.最初は,X線結晶解析やNMR等の構造生物学者がこの構造情報を利用していただけであったが,最近ではほとんどすべての生命科学分野の研究者が基礎データとして利用するだけでなく,ビッグデータの一部として他の生命科学データベースや化学や物理データとの統合化も進んでいる.本稿では,wwPDBとPDBjの活動について,特にそのデータの質の確保と透明性に対する方策を紹介する.<br>私どもPDBjでは,2000年より科学技術振興機構(JST)の支援によって,以下の活動を行っている.<br>1)“Data-in”活動:wwPDBに共通した品質管理によるデータ登録作業.図1に示すように,PDBjでは,これまでにwwPDB全体の約1/4の登録を行ってきている.<br>2)“Data-out”活動:毎週水曜日の午前9時(日本時間)に世界同時にアップデートされる共通データのダウンロード・サイトの運営と,独自に開発した種々のサービス・ツールや二次データベースの提供.

収録刊行物

  • ファルマシア

    ファルマシア 50 (5), 438-441, 2014

    公益社団法人 日本薬学会

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