乳がん細胞選択的な白金製剤のデリバリー

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抄録

分子内に白金(Pt)を有するシスプラチン(1)やカルボプラチン(2)は「白金製剤」と呼ばれる代表的な抗がん剤の1つである(図1).白金製剤は,DNAの構成塩基との架橋形成によってDNA合成を阻害し,細胞増殖を抑制することで乳がん,前立腺がん,卵巣がん,肺がんなど様々ながんに対して高い抗がん作用を示す.一方で,全身曝露に基づく腎障害,骨髄抑制,神経障害,嘔吐などの重篤な副作用の発現が問題であり,白金製剤のがん組織選択的なデリバリーが副作用の軽減や抗がん作用の増強を可能にすると考えられる.Calderonらは最近,乳がん細胞表面に過剰発現している黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)受容体に着目し,LHRH誘導体に白金錯体を結合させた乳がん細胞選択的な白金製剤の開発に成功したので,本稿で紹介する.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Calderon L. E. et al., Bioconjugate Chem., 28, 461–470(2017).<br>2) Ling N. C. et al., J. Med. Chem., 19, 937–941(1976).<br>3) Seitz S. et al., BMC Cancer, 14, 847(2014).<br>4) Isakoff S. J. et al., J. Clin. Oncol., 33, 1902–1909(2015).

収録刊行物

  • ファルマシア

    ファルマシア 53 (9), 919-919, 2017

    公益社団法人 日本薬学会

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