無視される刺激による知覚の不安定化(視知覚とその応用及び一般)

  • 高橋 康介
    (独)科学技術振興機構ERATO下條潜在脳機能プロジェクト
  • 渡邊 克巳
    東京大学先端科学技術研究センター:(独)科学技術振興機構ERATO下條潜在脳機能プロジェクト

書誌事項

タイトル別名
  • Perceptual destabilization induced by ignored stimuli.
  • 無視される刺激による知覚の不安定化
  • ムシサレル シゲキ ニ ヨル チカク ノ フアンテイカ

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抄録

曖昧で多義的な視覚入力に対し、ヒトの主観的知覚は確率的に交替する。近年では視覚的な知覚交替に触覚や聴覚情報が影響を与えることが示されており、知覚交替はそれぞれの感覚モダリティ固有の情報処理だけでは説明できない現象である。そこで本研究では異種感覚相互作用という観点から、知覚交替の時間特性を検討した。被験者は垂直または水平方向の運動が知覚可能な視覚的多義図形を観察し、知覚される運動方向を報告する課題を行った。これとは別に、背景刺激としてランダムまたは一定の時間間隔で視覚刺激と聴覚刺激を呈示した。その結果、ランダムな時間間隔で呈示した予測できない背景刺激の後に知覚交替が起こりやすくなり、時間選択的な知覚の不安定化か生じることが明らかとなった。視覚と聴覚の背景刺激による不安定化の効果量は相関していて、視覚刺激による不安定化の効果が大きい被験者は、聴覚刺激による不安定化の効果も大きかった。一方で、不安定化の効果は自発的な知覚交替の生じやすさとは独立であった。以上の結果から、(1)無視される刺激であっても、その出現が予測できない時には知覚交替の時間的分布を歪めること、(2)知覚の不安定化は感覚モダリティ固有のの情報処理とは独立なメカニズムに起因すること、(3)自発的な知覚交替を生成するメカニズムとは独立であること、が示唆された。

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参考文献 (11)*注記

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