人工飼料育による蚕繭の繭質ならびに繰糸について

書誌事項

タイトル別名
  • Cocoon qualities as the raw silk materials for filature of cocoons of <i>Bombyx mori</i> reared on the prepared food
  • ジンコウ シリョウイク ニ ヨル サンケン ノ ケンシツ ナラビニ ソウシ ニ ツイテ シリョウ

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抄録

製糸原料繭としての立場から人工飼料育繭の繭質および繰糸について調査, 検討を加えた。その要点は次のとおりである。<br>人工飼料育繭の繰糸成績および生糸の性状は, 大局的には普通の生桑葉育のものと較べて大差のない結果が得られた。しかしここで特に指摘したいことは, 本実験結果は多条機を使用し, 数緒をもって丁寧に繰糸した成績であり, 機械化の進んだ自動繰糸機に人工飼料育繭を使用した場合には, 繭糸量と繭糸繊度に特に問題点があると考えられる。<br>繭糸量の不足からくる繭殻の軟弱は, 中, 薄皮で潰れ繭を生じ易く, 中, 薄皮分離の不完全や索緒困難から生糸量歩合の減少につながるおそれが多分にある。繭糸量の不足は蚕品種, 飼料組成, 飼育法などいずれも養蚕法に起因するものであり, その改善が強く望まれる。また人工飼料育繭の繭糸繊度は一般に細くなる傾向が見られる。繭糸の場合内層繊度の一層細くなることが懸念されるので, 蚕品種や飼料の改良などその対策を切望する。<br>製糸の立場から, 人工飼料育繭を対象とした新らしい1つの進路を生繭の低温貯蔵繰糸に求め, 減圧滲透, 超音波処理などを煮繭工程に併用することを試み, 明るい見透しを得た。この試みはまだ緒についたばかりであるが, 年間飼育という人工飼料育の持つ1つの可能性をふまえ, 今後さらに検討すべきものと考える。

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