日本の森林域における大気降下窒素による窒素負荷・窒素流出の現状と課題

  • 田林 雄
    独立行政法人産業技術総合研究所地質情報研究部門
  • 山室 真澄
    東京大学大学院新領域創成科学研究科

書誌事項

タイトル別名
  • Accumulation and Leaching of Atmospheric Nitrogen Deposition in the Mountain Area in Japan
  • ニホン ノ シンリンイキ ニ オケル タイキ コウカ チッソ ニ ヨル チッソ フカ チッソ リュウシュツ ノ ゲンジョウ ト カダイ

この論文をさがす

説明

<p>人間の生活の変化は窒素循環に大きな影響を与えている。日本の渓流水質を 50年前と比較すると硝酸濃度が顕著に上昇している。渓流の上流には窒素の供 給源がないことから,都市部から発生した燃焼起源窒素が渓流の硝酸濃度の上昇に寄与していると考えられている。全国でも関東地方での上昇値がとりわけ大きく,さらに関東地方の中でも埼玉県秩父地方の上昇値が平均で 1.38mg L-1(98. 6μmol L−1)と最大であった。秩父地方の渓流水の硝酸イオ ン濃度の空間分布と風の流入方向から,硝酸イオン濃度の上昇には首都圏からの気塊の流入が大きく寄与していることが考えられた。従来水質が良好であるとされてきた山間部であるが,今後は国内からだけでなく越境大気として周辺各国からもたらされる気塊の影響によって,渓流水の窒素濃度がさらに上昇する可能性がある。山間部の森林域では間伐や脱窒を促す森林管理,窒素吸収を増進するリンの添加等によって土壌からの硝酸イオン流出が減少する可能性があり,燃焼起源窒素対策として検討されることが期待される。</p>

収録刊行物

  • 水利科学

    水利科学 54 (3), 49-62, 2010

    一般社団法人 日本治山治水協会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ