「怒り」・「抑うつ」と五蔵の症状との関係

  • 高士 将典
    明治国際医療大学大学院鍼灸研究科伝統鍼灸学専攻 東海大学医学部付属大磯病院鍼灸治療室
  • 和辻 直
    明治国際医療大学基礎鍼灸学講座

書誌事項

タイトル別名
  • Relationship between the five viscera symptoms and "depression"or "anger"
  • 「 イカリ 」 ・ 「 ヨクウツ 」 ト ゴゾウ ノ ショウジョウ ト ノ カンケイ

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抄録

【緒言】鍼灸臨床では身体的な愁訴を主に診ているが、 その背景には心理・感情状態が深く関わっていることが多い。 五蔵の病は心理・感情と関連するが、 その詳細は明確にされていない。 本研究では心理・感情面と東洋医学における五蔵の症状との関連性を調査し、 特に怒りや抑うつについて検討した。 <BR>【方法】本研究の趣旨に同意したK 専門学校と本学学生を対象 (男性60名、 女性42名、 平均年齢25±8歳) とした。 調査票は3種類を用い、 東洋医学の五蔵状態を推測するために東洋医学健康調査票 (OHQ57) を、 心理学的尺度は、 怒りの心理尺度であるSTAXI日本語版の34項目内の24項目とベック抑うつ尺度を用いた。 調査期間は2012年6月~7月に行った。 <BR>【結果】OHQ57における五蔵の平均点は肝が5.1±3.1点、 心が4.6±3.2点、 脾が5.2±3.1点、 肺が3.8±3.3点、 腎が3.9±2.7点であった。 STAXIの平均点は特性怒りが23.0±5.1点、 怒り表出18.8±4.1点、 怒り抑制20.8±3.8点、 怒り制御18.9±3.5点であった。 ベック抑うつ尺度は平均12.4±8.0点であった。 五蔵とSTAXI、 抑うつ尺度の相関は、 STAXIの特性怒りと肝、 怒り表出と肝・心・肺に、 ベックの抑うつでは心・脾で有意な相関を得た。 <BR>【考察・結語】怒りや抑うつは五蔵の中で肝が関連あるとされている。 本研究でも、 個人の怒りやすさを表す 「特性怒り」 で五蔵の中で肝のみが関連性を示した。 怒りを外部に向ける傾向を示す表出は、 肝と心と肺に関連性がみられた。 また因子分析で具体的な表出方法を検討すると、 肝ではOHQ57で肝の病証を疑う群と疑わない群での因子が見いだせ、 病証を疑う群では怒りの攻撃的表現が認めた。 一方、 心では因子が見出されず、 肺では病証を疑う群の因子抽出ができなかった。 以上より肝は他の蔵よりも怒りの表出で特徴を認めた。

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参考文献 (2)*注記

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