シンポジウム3-2 腸内細菌叢と自己免疫

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抄録

多発性硬化症(Multiple Sclerosis: MS)は,本邦では発症頻度が欧米に比して少ないとされているが,近年増加している.短期間での発症増加は,環境要因の変化によると考えられ,食の欧米化が一つの要因ではないかと考え研究をすすめてきた.腸では,自己応答性T細胞や制御性T細胞,またiNKT細胞やMAIT細胞などの自然リンパ球などの機能や数が調節されており,免疫応答に重要な器官である.またMSの動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎は,グレリンなどの消化管ペプチドによってミクログリアを介した炎症が抑制され,抗生剤の投与により腸内細菌叢の変化に伴い病態が抑制されるなど,腸内環境は神経炎症に深く関与する.実際,16S rRNA配列解析によりMS患者の腸内細菌叢を調べると,dysbiosisが存在することを見いだした.MS患者の腸内細菌は,多様性については健常人と変化がなかったが,菌叢の類似度の解析において健常人とは有意に変化していた.また,属レベルでは有意差があり,種レベルでは特定の細菌の低下がみられた.低下細菌の解析から,短鎖脂肪酸の産生低下が想定されたため,水溶性繊維を多く含む食事の投与や,短鎖脂肪酸の投与を行ったところ,EAEの病態は抑制された.髄鞘抗原特異的T細胞のサイトカイン産生が低下しており,病態抑制につながると考えられた.

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