SS2 生活習慣病:木を診て森も診よう!

  • 小川 佳宏
    九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学分野 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 分子細胞代謝学分野

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説明

<p>  内臓脂肪型肥満を背景として発症する生活習慣病では,脂肪組織における様々な代謝ストレスが全身臓器に波及・拡大化すると考えられ,臓器局所における「細胞間相互作用」と全身の「臓器代謝ネットワーク」による恒常性維持機構の破綻が想定されている.肥満の脂肪組織局所では,過剰な脂肪蓄積により細胞死に陥った肥大化脂肪細胞をマクロファージが取り囲んで貪食・処理する組織像としてcrown-like structures(CLS)が認められるが,このマクロファージには病原体センサーであるmacrophage-inducible C-type lectin(Mincle)が誘導され,死細胞に由来する細胞構成成分により活性化されて炎症の慢性化・線維化をもたらす.炎症の慢性化・線維化により脂肪組織から溢れ出た脂肪は異所性脂肪として肝臓に蓄積し,脂肪肝・NASHを発症するが,Mincleを欠損するマウスでは脂肪細胞が肥大化するにもかかわらずむしろ炎症所見や線維化が抑制され,「脂肪組織のHealthy Expansion」により肝臓の異所性脂肪が本来の貯蔵臓器である脂肪組織に再分布される.全身疾患である生活習慣病の診療現場では,個別の臓器・疾患とともに全身の臓器代謝ネットワークに留意する「木を診て森も診る」という姿勢が不可欠である.</p>

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