セレン欠乏によるマウス脳内の必須微量元素(Fe, Cu, Zn, Mn, Se)を含むタンパク質への影響

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タイトル別名
  • Effects of Selenium Deficiency on Proteins Containing Essential Trace Elements (Fe, Cu, Zn, Mn, Se) in Mouse Brain
  • セレン ケツボウ ニ ヨル マウス ノウナイ ノ ヒッス ビリョウ ゲンソ(Fe,Cu,Zn,Mn,Se)オ フクム タンパクシツ エ ノ エイキョウ

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抄録

セレン通常食を食べさせて飼育したマウス(Se通常群マウス)とセレン欠乏食で飼育したマウス(Se欠乏群マウス)に,セレン-82安定同位体を濃縮した亜セレン酸{82Se(IV)}またはセレノメチオニン(82SeMet)を静脈注射したのち,必須微量元素(Fe, Cu, Zn, Mn, Se)の化学形態別分析を,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を結合させた誘導結合プラズマ質量分析法(ICPMS)で測定した.セレン欠乏群マウスでは,恒常性により内因性セレンは一定に保たれ,セレノプロテインP(Sel-P)の化学形態で保存されていたセレンは細胞内グルタチオンペルオキシダーゼ(cGPx)の合成に使われた.また,静脈注射したセレンはSel-Pの合成には使われずcGPxの合成に使われた.SeMetの方がSe(IV)よりもcGPxの合成に有効に使われた.Seが欠乏した脳内では,抗酸化作用を補うような反応が観測された.抗酸化作用を示すスーパーオキドジスムターゼ(SOD)やメタロチオネイン(MT)が,セレン通常群マウスと比べより多く合成されたのに対し,ヒドロキシルラジカルを合成するチトクロームc(Cyt c)は,通常群マウスと比べ合成が押さえられた.特に,Se(IV)注射した方が,SeMet注射した時と比較して,内因性のcGPx, SOD, 及びMTが大きく増加した.これは,Se(IV)を静脈注射した方がスーパーオキシドがより合成されるため,抗酸化作用を示すタンパク質がより多く必要とされたためである.これらの実験事実より,必須微量元素(Fe, Cu, Zn, Mn, Se)を含むタンパク質は,活性酸素種による脳細胞の損傷を少なくするために相補的に働いていると考えられた.

収録刊行物

  • 分析化学

    分析化学 65 (7), 371-378, 2016

    公益社団法人 日本分析化学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (23)*注記

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