メダカを用いた分子遺伝学的手法による魚類「社会脳」の分子神経基盤の解明

書誌事項

タイトル別名
  • Exploring the neural geography of the social brain using medaka fish
  • メダカ オ モチイタ ブンシ イデンガクテキ シュホウ ニ ヨル ギョルイ 「 シャカイ ノウ 」 ノ ブンシ シンケイ キバン ノ カイメイ

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抄録

社会を形成する動物は,協調や世話,攻撃や拒絶など他メンバーに対する行動を柔軟に選択する。高度な社会性行動を営む動物は,他メンバーを記憶・識別し,相手との社会関係を理解し,社会的文脈に沿って意思決定する高次脳機能を持つ。これまで高度な社会行動に関わる脳機能の研究は主にヒトを対象にして進んできたが,分子・神経細胞レベルで解析するためには,適切なモデル生物が必要になる。著者らはこの問題にアプローチする目的で,分子遺伝学のモデル生物であるメダカに着目してきた。著者らはメダカの社会行動(群れ行動,社会学習,メスの配偶者選択,オスの配偶者防衛行動)の行動実験系を確立する過程で,メダカは個体認知に基づく高度な社会行動を示すことを発見した。メダカのメスは「見知らぬオス」を拒絶し,そばにいた「見知ったオス」を視覚認知して配偶相手として選択する傾向がある。さらに著者らは2014年に分子遺伝学及び電気生理学的手法を組み合わせて,終神経 GnRH3ニューロンがオスを配偶相手として受け入れるか否かのスイッチとして機能することを示した。一方で著者らは2013年にメダカ胚において赤外線レーザー誘起遺伝子発現操作を用いて,予定脳の微小領域に熱刺激依存に Cre/LoxP 組換えを誘導する技術を確立し,特定の脳領域において外来遺伝子の発現を誘導する遺伝子操作法を確立した。また最新の遺伝子改変技術(TALEN法,CRISPR/Casシステム)を用いることで,わずか5日の実験行程で目的遺伝子に変異を入れることが可能になった。今後,メダカは魚類「社会脳」の分子神経基盤を解析する優れたモデルになると期待される。

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