末期腎不全に至ったHIV患者10症例の臨床的検討

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  • Clinical characteristics of 10 HIV-infected patients who developed end-stage renal disease
  • マッキ ジンフゼン ニ イタッタ HIV カンジャ 10 ショウレイ ノ リンショウテキ ケントウ

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抄録

Highly active antiretroviral therapy(HAART)によりhuman immunodeficiency virus(HIV)感染者の生命予後は改善したが,長期生存に伴う合併症として慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)や末期腎不全(end-stage renal disease:ESRD)が問題となりつつある.本研究では,長期にわたる治療期間中にCKDからESRDに至ったHIV感染者の臨床的特徴を報告することを目的とした.都立駒込病院外来に通院しているHIV感染者の中で,2009年8月時点でESRDに至った10症例を対象とした.患者の臨床的特徴,透析導入までの期間,HIV感染コントロール状態,合併症,腎毒性を有する薬剤の曝露歴を診療録を用いて検討した.性別は全て男性,透析導入時の平均年齢は50.7±9.1歳,末梢血CD4陽性リンパ球数は340±185 cells/μL,HIV-RNA量は全例50 copies/mL未満であった.導入時血清クレアチニン値は6.6±1.6 mg/dL,eGFRは8.7±2.6 mL/min/1.73 m2であった.HAART開始から透析導入までの平均期間は8.1±2.9年であり,HAART開始時にCKDを有した3例は,その他の患者よりも4年早く透析導入に至った.透析導入後の死亡例は3例で1例は3年後,2例は数か月後に死亡した.HAART導入後に糖尿病は5例(50%)から7例(70%),高血圧は3例(30%)から9例(90%),高脂血症は1例(10%)から6例(60%)に増加した.腎毒性を有する抗レトロウイルス薬の代表であるTenofovir disoproxil fumarate(TDF)の内服歴は1例もなく,Indinavir(IDV)の内服歴は2例にあった.その他の腎毒性のある薬剤では,trimethoprim-sulfamethoxazole(ST)合剤の内服歴が4例,nonsteroidal anti-inflammatory drugs(NSAIDs)の内服歴が3例にあった.ESRDに至ったHIV感染者10例は,HAART開始前から半数に糖尿病を合併しており,平均約8年で透析導入となった.TDF内服歴を持つ患者は皆無であった.既存の糖尿病とHAARTによる代謝性合併症の増加がCKD進行に関係している可能性がある.

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