血液透析患者における血清アディポネクチンと生命予後の関連

  • 越田 善久
    東京女子医科大学第4内科 東和病院腎臓内科
  • 大坪 茂
    東京女子医科大学第4内科 三軒茶屋病院血液浄化療法科 東都医療大学ヒューマンケア学部看護学科
  • 雨宮 伸幸
    東京女子医科大学第4内科 東和病院腎臓内科
  • 大貫 隆子
    東京女子医科大学第4内科 東和病院腎臓内科
  • 新田 孝作
    東京女子医科大学第4内科

書誌事項

タイトル別名
  • Relationship between serum adiponectin levels and mortality in hemodialysis patients
  • ケツエキ トウセキ カンジャ ニ オケル ケッセイ アディポネクチン ト セイメイ ヨゴ ノ カンレン

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抄録

アディポネクチンは脂肪細胞より分泌され,肝臓と筋のインスリン感受性を改善することや血管内皮細胞の機能を改善すること,抗炎症作用をもつことなどが報告されている.血液透析患者において,高アディポネクチン値は死亡のリスクを軽減するとする報告と,逆に死亡のリスクを上昇させるという報告があり,一定の見解が得られていない.そこで血液透析患者における血清アディポネクチン濃度と生命予後との関連について検討した.当院の外来維持透析患者122例を後ろ向きに検討した.患者背景,週初めの透析前の血算,生化学データを調べた.アディポネクチンは血中では多量体構造の状態で存在しているが,中でも高分子量(high-molecular weight:HMW)アディポネクチンは最も生理活性が強く,今回の測定対象とした.血清アディポネクチン値の中央値(7.73 μg/mL)によってLow(L)群とHigh(H)群との2群に分け,両群の生命予後をログランク検定にて比較した.各因子の生命予後との相関解析はコックス比例ハザードモデルにて行った.最大観察期間は2.8年で観察期間中の生存率はH群76.8%,L群93.3%でH群において生存率が低値であった(p<0.001).死亡に対するコックス比例ハザード分析は単変量解析では高年齢(p<0.001),BMI低値(p<0.001),低血清アルブミン値(p<0.001),低ヘモグロビン値(p=0.006),高血清C反応性蛋白値(p<0.001),アディポネクチン高値群(p=0.028)が危険因子としてあげられた.多変量解析では生命予後に対する危険因子としては高齢(p<0.001),高血清C反応性蛋白値(p=0.001),低ヘモグロビン値(p=0.006)の順であげられ,アディポネクチン高値群の有意差はほかの因子で補正すると消失した(p=0.450).今回の検討ではアディポネクチンの高値群は,低値群より予後が不良であった.アディポネクチン高値群は死亡の危険因子として単解析であげられたが,年齢や血清C反応性蛋白値,BMI,血清アルブミン値などのほかの因子で補正するとその有意差は消失した.アディポネクチン高値が直接予後を悪化させているのではない可能性が考えられた.

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