ニホンツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus)によるクマハギの発生原因の検討

  • 吉田 洋
    岐阜大学大学院連合農学研究科環境計画学研究室
  • 林 進
    岐阜大学大学院連合農学研究科環境計画学研究室
  • 堀内 みどり
    岐阜大学農学部環境計画学研究室
  • 坪田 敏男
    岐阜大学農学部環境計画学研究室
  • 村瀬 哲磨
    岐阜大学農学部家畜臨床繁殖学研究室
  • 岡野 司
    岐阜大学農学部家畜臨床繁殖学研究室
  • 佐藤 美穂
    岐阜大学大学院連合獣医学研究科家畜臨床繁殖学研究室
  • 山本 かおり
    岐阜大学大学院連合獣医学研究科家畜臨床繁殖学研究室

書誌事項

タイトル別名
  • Analysis of causes of bark stripping by the Japanese black bear (Ursus thibetanus japonicus)
  • ニホンツキノワグマ Ursus thibetanus japonicus ニ ヨル クマハギ ノ ハッセイ ゲンイン ノ ケントウ

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説明

本研究は,ニホンツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus,以下ツキノワグマと略す)による針葉樹幹の摂食量と,他の食物の摂食量との関係ならびにツキノワグマの栄養状態の年次変動を把握することにより,クマハギ被害の発生原因を食物環境面から解明し,さらに被害防除に向けた施策を提案することを目的とした.ツキノワグマの糞内容物分析の結果,クマハギ被害の指標となる針葉樹幹の重量割合は,1998年より1999年および2000年の方が有意に高く(p<0.05),逆にツキノワグマの重要な食物種の一つであるウワミズザクラ(Prunus grayana)の果実の重量割合は,1999年および2000年より1998年の方が有意に高かった(p<0.05).また,ツキノワグマの血液学的検査の結果,1999年および2000年より1998年の方が,血中尿素濃度は低い傾向にあり,血中ヘモグロビン濃度は有意に高かった(p<0.05)ことより,1998年はツキノワグマの栄養状態がよかったと考えられる.以上のことから,クマハギ被害は,ツキノワグマの食物量が少なく低栄養の年に発生しやすく,ウワミズザクラの果実の豊凶が被害の発生の指標となる可能性が示唆された.したがって,クマハギ被害は,被害発生時期にツキノワグマの食物量を十分に確保する食物環境を整えることにより,その発生を抑えられる可能性があると考えられた.

収録刊行物

  • 哺乳類科学

    哺乳類科学 42 (1), 35-43, 2002

    日本哺乳類学会

被引用文献 (3)*注記

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参考文献 (28)*注記

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