テンが利用する果実の特徴―総説

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タイトル別名
  • Characteristics of fruits used by the Japanese marten—a review
  • テン ガ リヨウ スル カジツ ノ トクチョウ : ソウセツ

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抄録

<p>テンMartes melampusが利用する果実の特徴を理解するために,テンの食性に関する15編の論文を通覧したところ,テンの糞から97種と11属の種子が検出されていることが確認された.これら種子を含む「果実」のうち,針葉樹3種の種子を含む89種は広義の多肉果であった.ただしケンポナシHovenia dulcisの果実は核果で多肉質ではないが,果柄が肥厚し甘くなるので,実質的に多肉果状である.そのほかの8種は乾果で,袋果が1種(コブシMagnolia kobus),蒴果が7種であった.蒴果7種のうちマユミEuonymus hamiltonianusとツルウメモドキCelastrus orbiculatusは種子が多肉化する.それ以外の蒴果にはウルシ科の3種とカラスザンショウZanthoxylum ailanthoides,ヤブツバキCamellia japonicaがあった.ウルシ科3種は脂質に富み,栄養価が高い.ヤブツバキは種子が脂質に富む.果実サイズは小型(直径<10 mm)が70種(72.2%)であり,色は目立つものが76種(78.4%)で小さく目立つ鳥類散布果実がテンによく食べられていることがわかった.「大きく目立つ」果実は8種あり,このうち出現頻度が高かったのはアケビ属であった.鳥類散布に典型的な「小さく目立つ」果実と対照的な「大きく目立たない」な果実は3種あり,マタタビとケンポナシの2種は出現頻度も高かった.生育型は低木が41種,高木が31種,「つる」が15種,その他の草本が9種だった.これらが植生に占める面積を考えれば,「つる」は偏って多いと考えられた.生育地は林縁が20種,開放環境が36種,森林を含む「その他」が41種であった.こうしたことを総合すると,テンが利用する果実は鳥類散布の多肉果とともに,サルナシ,ケンポナシなど大きく目立たず,匂いで哺乳類を誘引するタイプのものも多いことが特徴的であることがわかった.</p>

収録刊行物

  • 哺乳類科学

    哺乳類科学 57 (2), 337-347, 2017

    日本哺乳類学会

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