コウモリの翼の個体発生

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タイトル別名
  • Development of the bat wing
  • コウモリ ノ ツバサ ノ コタイ ハッセイ

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コウモリ類は1,000以上の種からなり,地球上の様々な環境に進出し,繁栄を遂げた哺乳類群である.その成功の背景には言うまでもなく,彼らがもつ飛翔能力が深く関わっていると思われる.コウモリ類は前肢の形態を顕著に特殊化させることで飛翔装置としての翼を獲得した.翼は骨や筋,飛膜など様々な構成要素からなる複合体であり,中生代の末期から新生代の初期にかけてコウモリ類の共通祖先でただ一度獲得されたと考えられている.しかしながら,新規形態としてのコウモリ類の翼がどのようなメカニズムによって創り出されたのかについては長い間不明であった.近年,ヘラコウモリ科の一種であるセバタンビヘラコウモリ(Carollia perspicillata)を材料にした分子発生学的研究をとおして,Hoxd13Prx1Fgf8など脊椎動物の四肢形成に関わるとされる複数の遺伝子が単離され,胚期におけるそれらの発現パターンや機能が調べられつつある.その結果からコウモリ類における翼の形成にはこれらの分子の働きが深く関与している可能性が示唆された.本稿では分子発生学研究によって得られたコウモリ類の翼の発生機構に関する最新の知見を整理し,それによって飛翔能力の獲得により大きな成功をおさめた一哺乳類群の進化をこれまでとは異なる視点から考察する機会を与えたい.また,我が国に生息するコウモリを材料にした発生学研究の可能性についても検討する.<br>

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