原発性肺癌手術に対する自動縫合器による気管支断端縫合における縫合不全の経験

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  • Sutural Insufficiency Experienced in Bronchial Stump Closure with Automatic Stapling Devices Employed in Operations for Primary Lung Cancer

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我々は1985年より原発性肺癌手術の一部(58%)に対して自動縫合器による気管支断端縫合を行い, 現在までに自動縫合器使用55例中4例(7.3%)の縫合不全を経験した。4例中3例は右肺全摘後の右主幹に発生し, それらはすべてOverholt式の縫合方向であった。4例中3例は右B^6発生の中枢型扁平上皮癌であり, 他の1例は胸膜播種のある腺癌であった。4例中3例は術前に何らかの化学療法が行われており, 他の1例は75歳の高齢者であった。使用縫合器はHinged typeのディスポーザブルTAロング(DTA)30が3例であった。4例中3例は術後1か月以内の早期断端瘻であり, すべてDTA30が使われており, 気管支軟骨の断裂と組織学的に全層壊死の所見であった。その予後は不良で全例早期に死亡した。以上の経験から推察されたことは, まず自動縫合器側の問題点として, 一定方向への不当な張力と, ステイプルによるカッティングであり, 気管支側の問題点として, 術前の化学療法の影響と, 加齢による脆弱性である。ある一定の方向に圧力が否応もなくかかることから考えると, 自動縫合器使用はその適応を慎重に選ぶべきであり, 特に術前に何らかの化学療法が行われている症例や, 高齢者などのhigh risk例, 右主気管支断端縫合例に対する使用には, 細心の注意が必要である。我々は自動縫合器使用の利点は, 術野の汚染がないことと, 手術操作の簡便性, 手術時間の短縮のみにあると考えており, 安全性, 確実性に関しては, 縫合糸による手縫い以上のものではないと考えている。

収録刊行物

  • 気管支学

    気管支学 12 (4), 391-398, 1990

    日本呼吸器内視鏡学会

被引用文献 (1)*注記

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