気管腺様嚢胞癌の 1 切除例

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • A Case of Adenoid Cystic Carcinoma of the Trachea

この論文をさがす

抄録

50歳の男性で, 喘鳴, 呼吸困難を主訴とし, 17か月間気管支喘息として加療された気管腺様嚢胞癌の1例を経験した。気管腫瘍の臨床症状が慢性気管支炎や気管支喘息に類似しているため, 早期の診断が困難なことが多いが, 本症例では高IgE血症を伴っており, 気管支喘息との鑑別が一層困難であった。診断には, 胸部断層写真と気管支ファイバースコープが有用であったが, 外科的切除範囲の評価には, X線CT検査でも十分ではなく, Grilloのmediastinal tracheostomyの方法に準じて喉頭および頸部気管の切除を行ったが, 切除断端に腫瘍の残存を認めた。気管腺様嚢胞癌は, 低悪性度の腫瘍で進行が遅く, 病初期では, かえって良性疾患(慢性気管支炎や気管支喘息)との鑑別が困難となるが, 内科的治療に反応しない喘鳴や呼吸困難を認める症例に対しては, 胸部断層写真や気管支ファイバースコープを積極的に行うべきであると考えられた。

収録刊行物

  • 気管支学

    気管支学 13 (5), 543-547, 1991

    特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ