重篤な語音産生障害が長期に及んだ純粋語唖症例

書誌事項

タイトル別名
  • Long-term Severe Impairment of Speech Sound Production in a Patient with Aphemia.

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説明

脳梗塞による病変が,頭部CTスキャン上では,左中心溝周辺に限局しているにもかかわらず,長期にわたる語音産生障害がみられた80歳の純粋語唖症例を経験した。発症当初,自発的な発声発語は[ə]のみであった。音声模倣,口形模倣ともに困難であり,口部顔面失行がみられた。しかし,音声言語の聴覚的理解および文字言語の能力の保存は良好であった。自動言語はみられず,自動的反射的発話と意図的発話との差はなかった。言語治療は,構音訓練と書字指導とを17ヵ月間行った。口部顔面失行が経過中に消失していたにもかかわらず構音訓練の成果は上がりにくく,産生可能になった音は限られていたため,発語は実用のレベルには達せず,最終的に主な発信手段は書字と身ぶり動作であった。先行報告をみても,通常純粋語唖症例の語音産生障害は短期間で改善しており,劣位半球の対称領域あるいはBroca領の周辺領域に代償機能が存在することを示唆する論文がある。本症例の場合は,優位半球のみの病巣局在であり,また,Broca領周辺は保たれていたにもかかわらず回復が悪かった。

収録刊行物

  • 失語症研究

    失語症研究 17 (4), 313-318, 1997

    日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能学会)

被引用文献 (2)*注記

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参考文献 (21)*注記

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