外傷性斜視(外直筋痳痺)に対する筋電図バイオフィードバック・トレーニングの試み

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  • EMG-Biofeedback Training of Traumatic Strabismus (Palsy of VI Nerve)

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抄録

大学生が自転車で転倒して頬骨骨折し, 外傷性の斜視となった.後遺症は左外転神経痂痒(VI)の斜視と二次性斜頚, 顔面神経痂痒(VII)による左前額筋のシワ消失, 鼻唇溝の非対称, 舌の軽度の右方変位とろれつがまわらない構音障害(軽症), および歩行時に真直ぐ歩けない小脳失調(軽度)もみられ, 二年余である.本人の希望により, 筋電図バイオフィードバック訓練(EMG-BFT)を5回, 一ヶ月間おこなった.EMG-BFTの治療目標と訓練筋はイ)斜視の修正に眼輪筋, ロ)前額のシワの再形成に前額筋, ハ)舌の屈曲やろれつの改善に甲状舌骨筋, ニ)鼻唇溝の不対称の修正に頬骨筋や口角下制筋, ホ)高血圧である.斜頚は二次症状のため斜視のEMG-BFTで十分であり特別の訓練はしなかった.結果 : 外直筋痂痒は3回のEMG-BFTでほぼ改善し, 二次的斜視や斜頚も修正された.前額筋のEMG-BFTで収縮力が回復し, 努力により左前額にシワができ左右差も目立たない程度に回復した.しかし, 治療終結し訓練を中断した6ヶ月後にはまたシワが浅くなり完全な回復ではなかった.就職運動のため予定の10回を短縮し5回で終了した.本報告の課題の一つは眼輪筋のBFTで外転神経痂庫が改善する治療メカニズムを説明可能か否かであった.田崎・斉藤によれば脳におけるVI神経核とVH神経核は近接しVH神経がVI神経核を周回する.また, SOBOTA/BECHER著の図説人体解剖学ではVII神経の分枝がVI神経に達している.そのため, VII神経の情報がVI神経に伝わりBFループが形成される(近接効果)可能性があり, 理論的な整合性もあると思われた.EMG-BFTは盲人に感じのよい眼位を教えるのにも有用といわれる.斜視へのバイオフィードバックの応用は眼科領域で光電眼電図(PEOG)や眼電図(EOG)を用いた自己コントロールが研究されている.自己コントロールによる斜視の治療に, 今後の成果が期待される.

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