重症急性膵炎死因の解析

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タイトル別名
  • A STATISTICAL ANALYSIS OF DEATH DUE TO ACUTE PANCREATITIS
  • ジュウショウ キュウセイ スイエン シイン ノ カイセキ

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説明

急性膵炎は膵に原発した病変を中心にその変化は全身に波及することが知られ, 重症度あるいは死因の研究も各臓器にわたる検討がなされている.しかしその本質は極めて複雑であり, いまだ統一的見解が得られていない.その解明は臨床上及び治療的見地からも重要な課題である.今回我々は当教室の急性膵炎25症例 (生存例18例, 死亡例7例) を性差・年齢・成因・臨床症状・臨床検査成績及び組織学的所見について検討し, 重症膵炎の原因・病態・重症度判定基準について諸家の結果と比較検討した.急性膵炎は3.1: 1の割合で男性に多く, 成因としては生存例でアルコール性膵炎例が44.4%と最多であり, 死亡例では胆石性膵炎例が42.8%を占め, 重症膵炎は胆石性膵炎例に多かった.年齢的には生存例が平均36.1歳と30歳代に多いのに比べ, 死亡例では53.4歳と高齢者に多く, 50歳以上の重症膵炎の予後は悪い傾向にあった.重症度判定の最も重要な臨床所見はショック・乏尿~無尿などの腎不全徴候であり, 死亡例には全例認められたが生存例では全く認められなかった.さらに腹部筋性防禦・腹水・出血斑や消化管出血なども示標となると思われる.検査所見では特異的なmarkerに乏しいが, ショック・腎不全を反映するBUN・クレアチニンの上昇や・血小板の減少・血清カルシウムの低下などが参考となった.組織学的には, 膵は死亡例すべてが出血性壊死性変化を示し, 出血性膵炎2例・壊死性膵炎2例・出血性壊死性膵炎3例であった.腎では全例に混濁腫脹が認められ, 尿細管壊死は壊死性及び出血性壊死性膵炎に各1例づつ認められた.これに反して微小血栓はむしろ出血性膵炎の1例のみに認められ, この結果は急性膵炎の腎障害の発生機序に差のある可能性を示していると考えられた.膵周囲脂肪組織の壊死は死亡例全例にみられた.肺の所見では全例にうっ血水腫が存在したが肺胞壁の破壊は認めず, 循環不全に続発する一般的症状と思われた.以上の結果から, 重症膵炎の重症度を早期に判定し, 循環不全・腎障害に対する適切な処置をすることにより救命率を上昇させることが可能と考える.

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