超音波メスによるボーエン病治療の基礎的研究
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- 大谷 謙太
- 昭和大学藤が丘病院形成外科
書誌事項
- タイトル別名
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- BASIC RESEARCH INTO THE TREATMENT OF BOWEN'S DISEASE WITH THE ULTRASONIC SURGICAL ASPIRATOR IN SCID MICE
- ―SCIDマウスを使用して―
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抄録
超音波メスを表皮表面より作用させると真皮成分は温存され, 効果的に表皮成分のみを除去する事が可能である.今回, 超音波メスのこの特性を表皮内癌であるボーエン病の治療に応用できるのではないかと考えSCIDマウス (severe combined immunodeficiency mice: SCID) にボーエン病患者の病変部を移植し, 超音波メスを作用させ表皮成分 (ボーエン病の病変部) を除去した.その結果, 最長4カ月の経過観察にてボーエン病の再発は認められず, また, 超音波メスを作用させないコントロールでは, 移植後5カ月においても典型的なボーエン病の組織像を呈していた.さらに, 毛根部に対する超音波メスの作用効果をヒト正常頭皮を使用して調べ, その結果, 表皮成分は毛包狭部まで完全に除去されている事を確認した.ボーエン病は, 毛根部において基底膜は温存されるものの, 毛包漏斗部までが異形細胞に浸潤される.超音波メスの表皮破砕作用は, 毛包狭部まで及んでいるため, ボーエン病の病変部を完全に除去していることが示唆された.また, 上皮化は, 真皮内に残存した表皮成分よりおこることが示唆された.今回, 我々の試みた超音波メスによるボーエン病の治療が臨床応用されると以下のような利点が考えられる.1.手技が簡単, 2.侵襲が少ない, 3.手術時間が短い, 4.外来治療ができる, 5.術後の安静が不要である, 6.Safetymarginが自由に決められる, 7.耳介部, 鼻部 (特に, 鼻背部, 鼻翼部) , 眼瞼部など, 通常の外科的手術の行いにくい部位にも応用できる可能性がある.以上より, 高齢者に多いボーエン病の治療として, 有効な方法になりうると考えられる.
収録刊行物
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- 昭和医学会雑誌
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昭和医学会雑誌 57 (3), 190-197, 1997
昭和大学学士会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282679810895104
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- NII論文ID
- 130001824490
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- ISSN
- 21850976
- 00374342
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可