アルコール依存症とくに単身者の社会精神医学的研究

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  • SOCIAL PSYCHIATRIC STUDIES OF ALCOHOLISTS; ESPECIALLY ON SOLITARY LIFE

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最近, わが国においてもアルコールの消費量が増加し, アルコール依存症者は220万人にも達しているとの報告がある.これらの中から著者は単身者のアルコール依存症者に注目し, 特に生活保護法による医療扶助を受給中の単身者を対象に調査研究した.資料は東京都福祉局福祉部保護課に1984年10月より11月までの2か月間に提出された「精神障害者入院要否意見書」から抽出したものを基に, 都内および近県の精神病院の協力を得て改めて病歴を作成した.全症例143例のうち有効調査例 (対象例) は88例で, その概要は以下の通りであった.まず平均年齢は49.2歳であり, 従来に比しアルコール依存症者の高齢化がみられた.入院回数別年齢別分類は1~2回の入院と7回以上の入院が多く, 年齢が増すに従い, 入院回数が増加する傾向にあった.学歴は義務教育範囲の症例が62.5%を占めており, 教育程度は概して低かった.出身地別では東京都出身者が31.8%, それ以外の出身者が50.0% (不明18.2%) であり, 大多数が定職を持たず, その日暮らしには環境が良い東京に集まったものと思われた.結婚歴では結婚および同棲の経験者が46.6% (不明9.1%) であった.1984年3月, 東京都で常設の精神衛生対策委員会から「アルコール精神疾患医療体制整備に関する報告書」が発表され, 次いで厚生省も「アルコール関連問題対策に関する意見」を発表した.これらは特に都内の精神病院整備の一環として審議を継続中であった救急医療対策および身体合併症対策に次ぐ重要な策定であるが, 単身生活者に直接当てはめるにはなお困難な面が多い現状である.本研究の対象者は策定計画に見るようなデイ・ケア, 更生施設, 婦人保護施設, 老人施設などの利用および救急医療, 病院医療に繋ぐだけでは終わらず, 強力な社会内訓練を経験させることが極めて重要である.そのためには, 相談や指導にあたる有資格者を多数養成する必要があり, このための教育要員の養成もまた当面する甚だ重要な課題となるが, 著者は本研究で, アルコール依存症者の環境は, 高齢社会の到来と相まって, 複雑かつ多様性を帯び, その処遇に近い将来必要になると考ええられるいわゆる中間施設を中心とする具体的対策が迫られていることを指摘した.

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