ダンピング症候群の病態に関する研究
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- 成原 健太郎
- 昭和大学藤が丘病院外科
書誌事項
- タイトル別名
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- PATHOPHYSIOLOGICAL STUDY ON DUMPING SYNDROME
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説明
胃切除後患者にアンケート調査を行い, ダンピング症候群を疑われた42名に50%糖液150mlを経口投与し, 20名 (47.6%) に早期ダンピング症候群が発生した.ダンピング症候群における循環動態の変動, 生化学的な変動, 呼吸系の変動の関与を知る為に, 血中セロトニン, 血中カテコールアミン, 血清カリウム, 酸―塩基平衡心電図の変化, 心仕事量について検討を行い, 次の様な結果を得た.1) 血中セロトニンの有意の増加, 血中カテコールアミンの有意の増加がみられ, 糖負荷後, 経時的に両物質は平行関係にあり, セロトニン, カテコールアミンの間に密接な関係があることが示唆された.2) 血清カリウムは, ダンピング症候群で減少がみられたが, これは.血糖値の一時的上昇に伴う血中インシュリンの増加によって惹起されるものと考えられた.3) 心電図T波の平低化は, ダンピング症候群で著明に認められた.T波の平低化と関連がみられたのは血中カテコールアミンの増加, 血中セロトニンの増加, 心仕事量の増加であった.従来言われている血清カリウムの低下とT波の平低化との関連は希薄であった.4) 酸―塩基平衡ではPo2の低下, PCO2の上昇がみられ, 呼吸機能低下が示唆された.5) 心電図のT波の平低化, 心仕事量の増加, 酸―塩基平衡のアンバランスなどはダンピング症候群の他覚的症状として考えるのが妥当で, これらの諸症状には交感神経系が関与しているものと考えられた.6) ダンピング症候群における病態は総括的にみると可逆性ショックの病態と非常に似ている.すなわち, 心拍出量の低下, 心仕事量の増加がみられ末梢循環不全を来す, その為に循環器系の諸症状が発現するものと考えられた.7) 糖負荷後にみられる末梢循環不全は, カテコールアミンを賦活し, さらに末梢循環不全や心仕事量の増加を推進することが考えられた.以上のことからカテコールアミンはセロトニンとともにダンピング症候群の発現因子として不可欠な物質と考えられた.
収録刊行物
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- 昭和医学会雑誌
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昭和医学会雑誌 43 (6), 797-811, 1983
昭和大学学士会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282679811366528
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- NII論文ID
- 130001825880
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- ISSN
- 21850976
- 00374342
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可