ヒト歯石の光学顕微鏡, 走査電子顕微鏡およびX線マイクロアナライザによる形態学的研究

  • 中川 宏明
    昭和大学医学部第一解剖学教室 昭和大学歯学部第二口腔解剖学教室

書誌事項

タイトル別名
  • Study on Human Dental Calculus by Light-Microscopy, Scanning Electron-Microscopy and X-ray-Microanalysis

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説明

ヒトの下顎切歯に比較的密に付着した歯石を, 光顕, 走査電顕, およびエネルギー分散形X線マイクロァナライザを用いて形態学的に検索した.歯石の結晶には菌体内, 菌体間の石灰化が主体をなし, かつ, 水酸化アパタイトと考えられる微細な砂粒状結晶のほかに, 細菌の鋳型内や細菌の外側, さらに砂粒状結晶塊の表面や, その間を埋めるように, 歯石を種々のレベルで緻密化する結晶が観察された.これらは形態学的に桿状結晶, 種々の形と大きさをもつ板状結晶, そして, 六面体を基本とする結晶に区別され, CaとPのモル比から, それぞれ水酸化アパタイト, リン酸オクタカルシウム, または水酸化アパタイトとの中間産物, そして, Mg-ウイトロカイトと考えられた.光顕で報告されている層板状, 同心円状, 菊花状歯石を染色性の差, 複屈折性の有無に注意して電顕的に観察すると, これらの構造物は砂粒状結晶塊と板状結晶塊の種々の組合せの変化によって形成されることが明らかとなった.さらに, これらの歯石中にある平行状, 放射状に配列する板状結晶は, 線状菌叢の配列に従って形成されることが示され, また, 板状結晶の形成速度は砂粒状結晶のそれよりも早いことが示唆された.ほかに, 色調の異なる歯石の外表面と内表面について観察し, 多孔性と緻密性の関係, 分布する結晶の相違などに若干の知見をえた.

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