マウス下肢虚血モデルにおけるTNF-α欠損による血流改善効果TNF-αと血管新生

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タイトル別名
  • DEFICIENCY OF TNF-ALPHA IMPROVES THE RECOVERY OF BLOOD PERFUSION IN A MOUSE MODEL OF HINDLIMB ISCHEMIA
  • マウス カシ キョケツ モデル ニ オケル TNF a ケッソン ニ ヨル ケツリュウ カイゼン コウカ TNF a ト ケッカン シンセイ

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抄録

Tumor necrosis factor-alpha (TNF-α) は炎症性サイトカインの一つで, in vivo, in vitroで血管新生を促進あるいは抑制することが報告されている.その中で, 動物実験では虚血下肢にTNF-αアンタゴニストを筋肉注射し, 局所的にTNF-α作用を抑制し, 虚血下肢の血流改善効果が得られたことが報告されているが, 全身的なTNF-α欠損による虚血下肢の血流改善効果についての報告はない.今回, TNF-αノックアウトマウス (KO) を用い虚血下肢の血流改善効果の検討を行った.実験には10~12週齢 (25~30g) の野生型 (balb/c) マウス (WT, n=9) .KO (n=12) を使用した.鼠径部を切開し大腿動脈の近位部, 遠位部を結紮, 切除し下肢虚血モデルを作成した.結紮前, 直後, 1週, 2週, 4週後に下肢血流をレーザードップラー (LDPI) で近位部, 遠位部に分け経時的に測定した.結紮前, 1週。4週後にWT, KOを屠殺採血し, 血清サイトカイン濃度 (TNF-α, 血管内皮細胞増殖因子 (VEGF) ) をELISA法で測定した.4週後の虚血組織を免疫組織学的解析で評価した.LDPIではWT, KOともに下肢血流は漸増し, 近位部血流は2週後でKOで有意に改善し (WT53.9±17.1%, KO84.7±27.8%, p<o.ol) , 4週後でKOで有意に改善した (WT67.0±13.7%, KO96.8±22.6%, p<0.005) .また, 遠位部でも4週後でKOで有意に改善した (KO71.4±25.3%, WT51.8±11.5%, p<0.05) .免疫組織学的解析では, Capillary (p<0.05) , Arteriole density (p<0.005) ともKOで有意に多く.Mac-3, TUNEL陽性細胞数ともKOで有意に少なかった (p<0.0001) .ELISA法では, 血清TNF-α濃度は, WTで1週後で結紮前と比べ有意に上昇し (p<0.05) , 4週後で結紮前と同等にまで低下した.一方, 血清VEGF濃度はKOで結紮前から4週後まで一定であったのに対して, WTでは漸減し, 4週後でKOで有意に高値であった (p<0.001) .TNF-αの全身的欠損により, VEGF濃度の低下の抑制や炎症やアポトーシスの抑制により血管新生が促進し, マウスの下肢虚血での血流改善が促進したと考えられた.

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