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- 熊本 久大
- 昭和大学医学部整形外科学教室
書誌事項
- タイトル別名
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- EFFICACY OF BLOOD INFLAMMATORY CYTOKINE-INDUCED OSTEOLYSIS SCREENING IN CEMENTLESS TOTAL HIP ARTHROPLASTY (THA)
- セメントレス ジンコウ コカンセツ チカンジュツ THA ニ オケル ケッチュウ エンショウセイ サイトカイン ニ ヨル コツ ユウカイ ノ スクリーニング ノ ユウコウセイ ニ ツイテ
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抄録
セメントレス人工股関節置換術 (セメントレスTHA) は現在変形性股関節症に対する一治療法として確立されつつある手術法の一つであるが, 様々な問題も抱えているのもまた事実である.本研究ではosteolysisについて, osteolysisの発生機序に関与するとされている炎症性サイトカインを調べることで一つのスクリーニング検査とならないか調査した.対象は当院にてTHAを施行し術後5年以上経過し通院中の症例に対し, 単純X線写真と末梢血液中の炎症性サイトカインを比較検討した.炎症性サイトカインはIL-1, IL-6, TNF-α, GM-CSFの4項目について調査した.またosteolysisの有無は単純X線写真正面像にて判別した.50例のセメントレスTHAに対し一例は感染のため参考値とし検証対象から除外し, 残り49例において分析した.Osteolysisの部位は単純X線正面像にて判定した.分類にはGruenのzone分類を用いた.臼蓋側にosteolysisを認めたものはzone IIに最も多く, ステム側ではzone2に認めるものがもっとも多かった.IL-1とGM-CSFの上昇を認めたものはなかった.TNF-αの上昇を認めたものは3例であり, これはすべてosteolysisを認めた.IL-6は有意差は認めなかったものの6pg/ml以上のものでは全てosteolysisを認めた.サイトカインの上昇と線摩耗量, 及び年平均線摩耗量に明らかな相関関係は認めなかった.今回の研究により, osteolysisを認める症例では血清中のサイトカインの上昇を比較的多くに認めた.しかし線摩耗量や年平均線摩耗量が増えればサイトカインが上昇するわけではない.すなわち, 摩耗粉の量が多ければ反応が強いのではなく, これが骨-インプラント間に侵入した量に依存するのではないかと考えられる.今回の調査でもosteolysisを示した部位は臼蓋側ではscrew, 及びscrew holeの周囲となるzone IIに集中しており, ステム側でも比較的関節面に近い近位部に集中している.またサイトカインが多ければosteolysisが進行するのではなく, これにより刺激され, 活性化された破骨細胞と, もともとの造骨細胞のバランスにより進行してくるため, 生体のバックグラウンドが大きく左右すると考えられる.以上のことより, もっとも大事な事は充分な臨床所見をとることと, 単純レントゲンの評価ということになるが, これらにおいてosteolysisを疑う際IL-6とTNF-αは一つの評価の指標としてよいと考えられる.
収録刊行物
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- 昭和医学会雑誌
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昭和医学会雑誌 68 (2), 119-129, 2008
昭和大学学士会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282679812417920
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- NII論文ID
- 130001820447
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- NII書誌ID
- AN00117027
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- ISSN
- 21850976
- 00374342
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- NDL書誌ID
- 9652663
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- データソース種別
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- JaLC
- NDL
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可