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- 小倉 吉晴
- 昭和大学歯学部第一口腔解剖学教室
書誌事項
- タイトル別名
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- An Architectural Study on Lamellar Structures and the Fibrous Matrix of the Mandible
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説明
層板骨は外層の緻密骨または皮質骨と骨小柱が網状構造を呈する内部の海綿骨からなり, 緻密骨も海綿骨も合板状の骨層板で構築されている.緻密骨の基礎層板とハバース層板とは束状の基質線維の配列が交互に異なる骨層板が重積した構築を呈している.緻密骨を構築している骨層板と層板内の基質線維の主方向は緻密骨に加わる圧縮力の伝達方向か, または, 牽引力に抗する方向に配列されている.また, 円筒状のオステオンからなるハバース層板はすべての方向の屈曲に耐え.中心軸であるハバース管は緻密骨の屈曲による圧縮力や牽引力を中和すると考えられている.数層の骨層板の重積からなる海綿骨の骨小柱は骨の内部に向かう応力に対応する配列を呈していて, 緻密骨層板からの応力を中和, 分散させる構造体である.頭蓋の可動部分である下顎骨は左右の下顎頭を結んで前方に向かう馬蹄形の曲線を描いており, 下顎体の正中部はオトガイ隆起で補強されている.下顎骨には歯根膜を介しての咀嚼圧や下顎骨に付着する咀嚼筋の牽引力が複合的な応力として作用する.本研究では複合的な応力がとくに作用する下顎角部, オトガイ孔部ならびに下顎体の正中部の緻密骨層板を構築する線維性基質と海綿骨の骨小柱の配列を解剖学実習用男性遺体から摘出した有歯下顎骨を材料として高分解能の走査電子顕微鏡によって観察した結果を下顎骨の各部に加わる応力との係りについて考察した.咬筋と内側翼突筋の付着部である下顎角部の内外面は下前方から上後方に配列された基質線維束で構築されていた.下顎角部の緻密骨のハバース層板は下前方から上後方に屈曲しつつ斜走するオステオンで構築されていた.下顎角の内部は下前方から上後方に配列された海綿骨の骨小柱で構築されていたが, 中央部, すなわち, 下顎孔部と下顎管部は骨小柱がなく, 下顎角の上部は骨小柱が比較的疎で骨髄腔はやや拡大していた.下顎体外側面のオトガイ孔の上下部は前上方から後下方に配列された基質線維束で, 上部は交錯した上下方向に配列された基質線維束で構築されていた.一方, ハバース層板はオトガイ孔を取り巻く配列の屈曲したオステオンで構築されていた.オトガイ孔が位置する下顎第二小臼歯の歯槽部では固有歯槽骨は支持歯槽骨である内板と外板とに癒着していたが, オトガイ孔周囲の海綿骨は比較的疎な海綿骨の骨小柱で構築されていた.下顎体外側面のオトガイ部の上半部は上前方から下後方に配列された基質線維束で構築されており, 基質線維束は正中線上で交錯していた.オトガイ隆起部の基質線維束はほぼ上下方向に配列されていた.オトガイ部の緻密骨のハバース層板はほぼ左右方向に配列された屈曲したオステオンで構築されていた.オトガイ部に近接している下顎中切歯の歯槽部では固有歯槽骨は支持歯槽骨の内板と外板に全長にわたって癒着していた.オトガイ部は主として下後方への骨小柱で構築されていた.
収録刊行物
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- The Journal of Showa University Dental Society
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The Journal of Showa University Dental Society 20 (1), 6-23, 2000
昭和大学・昭和歯学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282679812853888
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- NII論文ID
- 10020434928
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- NII書誌ID
- AN00117140
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- ISSN
- 21865396
- 0285922X
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可