早期大腸癌の病理形態像と臨床病理学的特徴

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タイトル別名
  • PATHOLOGICAL MORPHOLOGY AND CLINICO-PATHOLOGICAL FEATURES OF EARLY COLORECTAL CANCER
  • ソウキ ダイチョウガン ノ ビョウリ ケイタイゾウ ト リンショウ ビョウリガクテキ トクチョウ

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説明

大腸癌の多くは早期癌として発見され,その予後も大いに期待できるが,表在癌であっても予後不良な症例も存在する.そこで,日常経験する大腸早期癌の特徴を俯瞰的に把握する目的で,臨床病理学的検索を加えた.全結腸内視鏡観察がなされ,病理組織学的に早期癌と診断された413病変(401症例)を材料とした.臨床病理学的事項を精査し,内視鏡的所見から発症部位,肉眼分類を試みた.病理組織学的には組織型,分化度,壁深達度,脈管侵襲について検索し,比較検討した.平均患者年齢は64.5歳で,男女比は2:2であった.発症部位はSR領域に62%(257病変),次いでCA領域に21%(86病変),T領域に10%(42病変),D領域に7%(28病変)の順であった.肉眼型は,隆起型が61%(251病変),平坦型が31%(130病変),陥凹型が8%(32病変)の順であった.組織型は,ほとんどが高分化腺癌(96%:398病変)で,中分化型腺癌(4%:15病変)も存在したが,低分化型腺癌や未分化癌を含むその他の癌(Miscellaneous carcinomas)は認められなかった.全対象病変に対し腺腫内癌,腺腫併存癌および純粋腺癌は,ほぼ同率に認められたが,陥凹型の全ては純粋腺癌であった.隆起型粘膜内(pM)癌が最も多く192病変(46%),次いで平坦型pM癌が101病変(同24%),隆起型粘膜下層浸潤(pSM)癌が59病変(同14%),平坦型pSM癌と陥凹型pSM癌は各々29病変(同7%),陥凹型pM癌は3病変(1%以下)であった.隆起型と平坦型病変では腺腫成分と腺癌成分の混在病変が高率に発現する傾向にあり,脈管侵襲はpM腺癌病変では確認できなかったが,pSM腺癌病変ではリンパ管侵襲が12%(51病変)に,静脈侵襲は8%(33病変)に認められた.早期大腸癌において隆起型・平坦型病変は,腺腫内腺癌および腺腫併存腺癌の確率が高く,粘膜内癌で発見され,予後が期待でき得るものが多い.しかし陥凹型病変は全例純粋腺癌であり,de novo癌とし発生し,速やかにpSM癌に進行し脈管侵襲を伴う割合が高く,粘膜内癌の段階での発見・治療が重要であり,更なる診断法の進歩が期待された.

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