―事上麻錬の日々―肝臓外科における内視鏡手術の導入

書誌事項

タイトル別名
  • Application of the Laparoscopic Surgery in Liver Resection
  • 第78回総会会長講演 事上磨錬の日々 肝臓外科における内視鏡手術の導入
  • ダイ78カイ ソウカイ カイチョウ コウエン ジ ジョウマレン ノ ヒビ カンゾウ ゲカ ニ オケル ナイシキョウ シュジュツ ノ ドウニュウ

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抄録

腹腔鏡下肝切除の導入と検証には紆余曲折はあったが,患者さんに対して低侵襲というメリットがあると信じてここまで前向きにオールを漕いできた.腹腔鏡下肝切除は1993年にわれわれが導入して以来,徐々に普及はされてはいたが,更なる推進をめざし2007年に肝臓内視鏡外科研究会が発足した.その後,腹腔鏡下肝切徐を導入する施設ならびに症例数は着実に増加した.そして,近年では腹腔鏡手術の利点である低侵襲だけを強調するのではなく,術中出血量減少,術後合併症の軽減や非劣性の長期予後の成績も報告されてきている.<BR>一方で肝胆膵領域の腹腔鏡手術への無理な適応拡大から不幸な結果を招いた事例が大きな社会問題となった.腹腔鏡下肝切除では通常の開腹手術に比べ,その手技の習得により多くの時間を要する.そのため症例ごとに外科医自身の手術技量を考慮して,慎重に適応を検討する必要がある.最近では多施設共同研究による大規模な傾向スコアマッチングも行われ,腹腔鏡下肝切除の優位性も報告され,より高いエビデンスの獲得へ向けての努力も続いている.2015年から肝臓内視鏡外科研究会では腹腔鏡下肝切除術の全症例の前向き登録を開始した.そして翌年には,この登録制度を条件に肝亜区域切除術,区域切除術,肝葉切除術の術式が保険収載されることになった.今後,これらの取り組みにより患者への安全性を担保し,公正で幅広いデータを蓄積し,術式に対する理解を深めてもらうことで,腹腔鏡下肝切除の正しい評価と安心・安全な普及を望んでいる.

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参考文献 (27)*注記

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