パイロットルームについて

  • 乾 昇
    遠州製作株式会社阪本繊維機械研究所

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タイトル別名
  • パイロットルーム ニ ツイテ

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抄録

無ひ織機はそのよこ入れ方式からジェット方式,レピァ方式およびグリッパ方式の3つに大別される。<br>パイロットルームはそのうちのグリッパ方式に属するものであり,この方式で代表的なものとしてよく知られているのはSulzer Weaving Machineであろう。そこでパイロットルームをSulzerと比較しながらその構造や特徴など紹介する。<br> パイロットルームはパイロットと称する一種のグリッパシャットル1Tを往復させて,織機の両側に設置したコーンから直接よこ糸を交互に挿入するようにした方式の織機である。このパイロットは長さ約10cm,,重さ約26gという小さいものでその両端付近によこ系をくわえることができる把持具を備えており,レースの両端に取付けられたよこ入れ装置の間をパイロットガイドを案内として往復する。<br> この点Sulzerではグリッパつ発射装置および受取装置はレースとは切離され,本体に固定して設置されており,おさのみが前後動する。しかし静止角をもつたカム駆動で前後運動しグリッパの飛走中おさは静止するようになつており,またグリッパは1方向にのみ発射されコンベアによって発射位置に返還されるようになつている。これらの点がよこ入れ機構の思想上の根本的な差異と考えられる。<br> 本機は普通の織機のひ箱のようにレース上によこ入れ装置を設けたから,おさと切離したものに比べグリッパの飛走にあてる時間を長くとることが可能で,換言すれば同じグリッパ速度ならば高速化がはかり得ることになる。またパイロットやグリッパのような飛走体の案内路をレース上に必要とするこの種の織機では,ひ箱の出入口と案内路の出入口の合致性が重要であり,この良否は直接ひ通りの良否に影響する。この点パイロットルームでは,ひ箱はレースに固定されているためそれらの相対運動がなく正確かつ容易に合致させうるが,分離型では工作,構成面では相対的なずれが起らないよう精度の維持によほどの配慮が必要である。なお織機回転の円滑さから眺めても本機はおさ打ち運動がクランク駆動なので振動も少なく,従来織機の概念を越えるもではない。さらにパイロット飛走が一方通行ではなく,往復して両側から交互によこ入れできるので2種のよこ糸をミックスして織る場合,なんら特殊な構造を必要としない。しかもこのようなよこ入れ装置を設けたレースを乗せ換えるだけで既存の有ひ織機をパイロットルームにすることができるという大きな利点がある。このことは太番手やスプリットヤーンのようなよこ管使用に対して経済性の低い現有織機を改造する場合とくにこれらが普通織機の場合には,非常に大きなメリットとなる。第1図は阪本式管替自動織機を組替えたパイロットルームの全景である。

収録刊行物

  • 繊維学会誌

    繊維学会誌 23 (11), S315-S319, 1967

    社団法人 繊維学会

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