炎症性腸疾患についての心理社会的考察 : アメリカ人を対象として

  • 志村 翠
    早稲田大学人間科学部人間健康科学科:東京大学医学部心療内科

書誌事項

タイトル別名
  • Psychosocial Considerations for Patients with Inflammatory Bowel Disease : Preliminary study in California
  • Psychosocial Considerations for Patient

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抄録

炎症性腸疾患(IBD : クローン病, 潰瘍性大腸炎)の症状維持・再発に関する研究においては、従来より性格傾向や心理社会的要因の及ぼす影響についての報告が数多くみられる。本研究で取り上げたハーディネスは, アメリカのシカゴ大学グループ(Maddi, Kobasaら)によって提唱された性格概念で, ストレス下における健康の維持に直接的・間接的な影響を与えると考えられ, commitment, challenge, controlの3つの構成要素から成る。また近年, 概念の定義に問題は残されているものの, ソーシャルサポートの疾病予防や健康の維持促進に与える効果も数多く報告されてきている。本研究においては, ハーディネスとソーシャルサポートがIBD患者の心理社会的・身体的機能に及ぼす主効果と交互作用についての検討を行った。対象は, IBDの患者, 家族, 医療スタッフらで構成される全米組織のカリフォルニア州サンディエゴ支部の患者会員59例(男子18例, 女子41例)で, 治療方法・罹病期間・重症度について聞くフェイスシート, ハーディネス度を測る質問紙, ソーシャルサポートについての質問紙, 症状や症状に関わる情緒的・社会的・身体的機能についての質問紙を用いたメール-イン-サーベイを実施した。ハーディネス, ソーシャルサポートを独立変数, 情緒的・社会的・身体的機能を従属変数とした重回帰分析を行った結果, 両者の有意な主効果は認められなかったが, ハーディネスの社会的機能に与える影響に有意差傾向がみられた。さらに, 身体的機能については, ハーディネス構成要素中commitmentとソーシャルサポートの有意な交互作用が認められた。すなわち, 自己に対しての積極的関与の度合いが大きいほど, また知覚されたソーシャルサポートへの満足度が高いほど, 身体的症状が少ないことが示唆された。今後の前向き調査研究, 日本人対象者への実施についての考察を行う。

収録刊行物

  • 心身医学

    心身医学 37 (7), 491-501, 1997

    一般社団法人 日本心身医学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (40)*注記

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