「軽症うつ病」の症状の特徴について

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説明

うつ病にも軽症群が存在するという考えをもつ臨床家は多いものの,軽症群の概念や特徴を捉えることを目的とした過去の研究は少ない.本研究では,大うつ病と小うつ病の患者(n=34)を対象に,軽症群と中等症以上の群で,うつに関連した扇状の出現率の差異を検討した.「軽症うつ病」(うつ病軽症群)を,大うつ病エピソード(DSM IV)に記載されている9症状のうち6症状以下の該当数にとどまる群と仮定したところ,「憂うつ感・沈んだ気持ち」(p-0.007),「睡眠障害」(p-0.009),「無価値観・罪悪感](p-0.000),「希死念慮](p-0.002)の出現率および現時点での自殺危険性(p-0.031)は,中等症以上の群と比較して有意に低いことが明らかになった.さらに,「憂うつ感・沈んだ気持ち」,「無価値観・罪悪感」の2項目による両群の判別率は85.3%であった.なお,両群間でSDS得点に有意な差は認められなかった.今後は,さらに専門科およびプライマリ・ケア施設での調査を進め,最終的には,治療対象とすべき「軽症うつ病」の見過ごしを避けるため,プライマリ・ケアの現場で使用可能な「軽症うつ病」の概念や診断基準を作成する予定である.

収録刊行物

  • 心身医学

    心身医学 43 (3), 204-, 2003

    一般社団法人 日本心身医学会

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