線維筋痛症の痛みをどうとらえるか : 慢性疼痛のモデル的疾患として(シンポジウム:慢性疼痛の基礎と臨床,2008年,第49回日本心身医学会総会(札幌))

  • 村上 正人
    日本大学医学部附属板橋病院心療内科:日本大学医学部内科学系呼吸器内科分野
  • 松野 俊夫
    日本大学医学部附属板橋病院心療内科
  • 金 外淑
    日本大学医学部附属板橋病院心療内科:兵庫県立大学看護学部心理学系
  • 小池 一喜
    日本大学医学部附属板橋病院心療内科:日本大学歯学部口腔診断科
  • 井上 幹紀親
    日本大学医学部附属板橋病院心療内科:日本大学医学部内科学系呼吸器内科分野
  • 三浦 勝浩
    日本大学医学部附属板橋病院心療内科:日本大学医学部内科学系血液膠原病内科分野
  • 花岡 啓子
    日本大学医学部附属板橋病院心療内科:吉祥寺通り花岡クリニック
  • 江花 昭一
    日本大学医学部附属板橋病院心療内科:横浜労災病院心療内科
  • 橋本 修
    日本大学医学部内科学系呼吸器内科分野

書誌事項

タイトル別名
  • How to Evaluate the Pain of Fibromyalgia Syndrome : FMS as a Typical Model of Chronic Pain(Symposium/The Mechanism and Practice of Chronic Pain)
  • 線維筋痛症の痛みをどうとらえるか--慢性疼痛のモデル的疾患として
  • センイキンツウショウ ノ イタミ オ ドウ トラエル カ マンセイ トウツウ ノ モデルテキ シッカン ト シテ

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説明

近年わが国でも注目されてきた線維筋痛症候群(fibromyalgia syndrome;FMS)は,長期間持続する全身の結合織における疼痛と多彩な愁訴を呈する慢性疼痛のモデルともいえる病態であるが,心身症としての側面を濃厚に有している疾患でもある.発症の背景には何らかの遺伝的,生理学的要因に加え,女性の内分泌的な内的環境の変化やライフサイクル上の多彩な心理社会的ストレス要因も大きく関係する.患者の90%以上に発症の時期に一致して手術・事故・外傷・出産・肉体的過労・過剰な運動などのエピソードがあり,天候,環境変化や不安・抑うつ・怒り・強迫・過緊張・焦燥などの心理的ストレスと連動して病態が変動する,強迫,完全性,執着などの性格特性がみられる,など強い心身相関が認められる.患者の尿中セロトニン,ノルアドレナリンの代謝産物である5HIAAやMHPG,骨格筋の解糖系に関与するアシルカルニチンはうつ病患者と同等に低値であり,FMSの痛みや倦怠感,多彩な身体症状,精神症状の背景にモノアミンやカルニチン代謝が関与していることが示唆される.FMSの治療には通常の対症療法が奏効しないため,的確な薬物療法が重要でSSRIやSNRIなどの抗うつ薬,抗けいれん薬,漢方薬などが併用される.さらにストレス緩和のための生活指導や心身医学的な視点からのカウンセリング,認知行動療法など全人的治療が必須である.この考え方はFMSのみならず他の慢性疼痛にも共通しており,薬物や理学的治療法などの「医療モデル」に加え「成長モデル」からアプローチする重要性は変わらないものである.

収録刊行物

  • 心身医学

    心身医学 49 (8), 893-902, 2009

    一般社団法人 日本心身医学会

被引用文献 (5)*注記

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参考文献 (24)*注記

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