パニック障害の脳内機構(シンポジウム : 情動形成とその異常の脳内機構-情動と心身相関のBlack Boxに迫る,2006年,第47回日本心身医学会総会(東京))

書誌事項

タイトル別名
  • The Essential Mechanism of Panic Disorder in the Human Brain(Symposium : Brain Mechanism of Normal and Abnormal Emotional Processing : Exploring Black Box of Emotion and Mind-Body Interaction)
  • パニック障害の脳内機構
  • パニック ショウガイ ノ ノウナイ キコウ

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抄録

パニック障害(panic disorder ; PD)の脳内機構に関する仮説として,Gormanらは"恐怖ネットワーク"仮説を提唱した.この"恐怖ネットワーク"は,扁桃体を中心とした,海馬や内側前頭前野などとの相互神経回路網を想定しており,扁桃体から視床下部,脳幹への投射は,恐怖条件づけされたさまざまな反応を引き起こすとされている.これまでわれわれは,FDG-PETを用いてPD患者の脳内糖代謝に関する研究を行ってきた.この研究の目的の1つとしては,この"恐怖ネットワーク"仮説を検証し,PDにおける脳内機構を明らかにすることである.さらに,もう1つの目的としては,ヒトの脳内に"認知行動療法"がどのような影響を及ぼしているのかということを調べることである.この研究において,われわれは,まず治療前のPD患者の脳内糖代謝を,正常統制群と比較したうえで,認知行動療法により治療が奏効した後に生じた脳内での変化について調べた.治療前の状態において,両側扁桃体,海馬および脳幹や小脳の一部の糖代謝活性が,正常統制群に比較して,PD患者において有意に上昇していた.認知行動療法治療後においては,両側前頭前野領域における糖代謝の亢進が認められた一方,右海馬,左小脳,橋などの領域において糖代謝が低下していた.しかし,扁桃体の有意な糖代謝変化は認められなかった.これらの結果は,GormanによるPDにおける恐怖ネットワーク仮説を脳機能画像解析的アプローチにより初めて検証した.また,認知行動療法後の結果より,この仮説に基づいた認知行動療法の脳内における治療的メカニズムをも明らかにした.

収録刊行物

  • 心身医学

    心身医学 47 (8), 697-703, 2007

    一般社団法人 日本心身医学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (7)*注記

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