急性下壁心筋梗塞における異常Q波の消失と左室機能改善の関連についての検討
書誌事項
- タイトル別名
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- Improvement of Cardiac Function in Patients With and Without Disappearance of Abnormal Q waves After Inferior Myocardial Infarction
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説明
急性期に異常Q波が出現したQ波心筋梗塞には,異常Q波が経過中に消失する例が存在する。これらは,Q波が消失しない例と比べて,梗塞サイズが小さく,慢性期の左室機能が良好であるという報告がある。しかし,報告のほとんどは前壁中隔心筋梗塞についての報告であり,下壁梗塞に限定しての報告は認められない。本研究は,下壁心筋梗塞における異常Q波消失の臨床的意義を明らかにすることを目的とし,下壁心筋梗塞における下壁領域の誘導(II,III,aVF誘導)の異常Q波の消失と慢性期の左室壁機能の関連を検討した。対象は初回Q波急性下壁心筋梗塞で当院に入院した184例である。この184例を,心筋梗塞発症1年後の心電図において,II,III,aVFの全誘導の異常Q波が消失した20例(Group Q(-)),2誘導(II,aVF誘導)の異常Q波が消失した37例(Group Q(+)I),1誘導(aVF誘導)のみ異常Q波が消失した70例(Group Q(+)II),3誘導(II,III,aVF)全てに異常Q波が残存した57例(Group Q(+)III)の4群に分類した。異常Q波が消失した3群は,心エコーによる下壁領域の局所壁運動(Inf-WMI)が急性期から発症1年後までに有意に改善し(p < 0.01),心筋viabilityの存在が認められた。発症1年後までに左室壁運動が正常に改善した症例は,Group Q(-)で7例(35%),およびGroup Q(+)Iで8例 (22%)と,Group Q(+)III(0例:0%)より高率に認められた(p < 0.001)。Group Q(-),Group Q(+)Iでは,異常Q波が残存するGroup Q(+)IIIと比較し,Inf-WMIとSPECTによるtotal defect scoreは有意に小さく,さらに,発症1年後の左室駆出率は有意に高値であった(p < 0.001)。下壁心筋梗塞の慢性期に下壁領域の異常Q波が消失する症例では,心筋viabilityが存在し,梗塞サイズが小さく,左室収縮能が良好であった。とくに,異常Q波の消失する誘導数が多い症例ほど,左室壁運動の改善や慢性期の左室収縮能が良好であった。下壁領域の異常Q波の消失の有無および消失する誘導数は左室機能改善の1つの指標であると考えられた。
収録刊行物
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- 杏林医学会雑誌
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杏林医学会雑誌 40 (3), 43-50, 2009
杏林医学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282679869802368
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- NII論文ID
- 130000259023
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- ISSN
- 1349886X
- 03685829
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可